工業デザインの製図
真水公雍  

 工業デザインのプレゼンテーションを行なう場合には図面が必要である。もちろん、モデル、レンダリング等も必要に応じて添付するが、これはあくまでも理解しやすくするための手段であり、最も必要とするのはやはり図面である。

 工業デザインの図面は設計図である。これが製作図である必要はない。いいかえれば、それがどんな部品によって作られ、その部品をつくるのにどんな機械を使い、どんな工程を通す必要があるかということよりも、そのものがどんなかたちをしているか、どういう考え方でそうなったか、又、どういう風に作動するかなどといったことが納得できる方がよいのである。

 大体、設計図には予備設計図と決定設計図との二通りがある。予備設計図というのは人に見せるためのものではなく、自分が納得するためのもので、部分図も含めたラフ・ドローイングのことであり、メカニズムの組込み方や、各部分の寸法的なレイアウト、曲面や角Rの処理、材質や工法、接続方式などいろいろ検討するのに用いるものである。決定設計図というのは、各種の要素を形にまとめあげ最終的な決定を下せる様なもので、設計者がどの様な意図でその形を創り出したのかが読みとれる様な図面である。

 この決定設計図は、現在、多くの場合はJISの機械製図に準じているが、これをもっと工業デザインの製図として理解しやすい方向へ進めて行くこととラフ・ドローイングの適確な方向を見出すといったことが現在の研究テーマである。

 まだ、正確な内容の発表が出来る段階ではないため詳細は省くが、主な項目としては、決定設計図の場合には、曲面の処理、表現方法、寸法記入の限界、三面図の上での調子・質感・量感の表現、陰の部分の表示、図面のレイアウト等の要素が考えられる。又、予備設計図の場合には、速度を速めるための適当な方法、フリーハンドによる図面の表現方法などが考えられる。

 現状では資料集めや整理などに時間をかけているが、今後は工業デザインの製図の最良の方法を確立させるつもりで研究を続けて行きたいと考えている。