若い人の訪問着
佐藤みさ子  

 「訪問着」と云う言葉を使うとほとんどの人が和服を連想し、女性の改まった服装は訪問着と一般にもまだまだ考えられているように思われる。それを裏付けるかのようにお正月成人の日などに見られる若い女性の服装のほとんどが、白っぽい同じような訪問着姿である。たしかに和服は日本特有の衣装であり、長い歴史を持っている日本の伝統を思わせる典雅な雰囲気さえ感じ、晴着と云う実感を起させるのに充分である。それに対して日本の洋服の歴史は百年にみたない。欧米から入って来た洋服は、鹿鳴館時代の特権階級のものであり、一般化されたのは関東大震災頃からで「機能」と云う面から生活様式は和風のままで、洋服だけが一般女性の服装の中に定着してしまった。しかし、現在は生活の様式も交際社会も欧米とは開きがあるにしても、以前よりは変って来ている。と同時に若い女性白自身も、多分にハダで洋服を感じている。また、プロポーションも変って来ている。一方洋服の素材の種類や品質、シルエット等の上からも、非常に多くの変化が示されて来ている。若い人達が改まった場合の服装として、すぐ誰もが個性のない和服を取り上げずに、若い人の「生括に密着した洋服」での訪問着(フォーマルな洋服)を考えて見てはどうだろうか。それによって衣生活は合理的になり若い人の個性が生かされて、無理なく充分美しさが表現出来ると思われる。その為には、日本の生活環境に即したフォーマルな洋服の着こなしを、一般の人達がよく知って育てて行くべきではないだろうか。

 写真のカクテルドレスは若い人の訪問着として製作した。披露宴に着る為に清楚な雰囲気を出すように心掛け、形式としては「スリーブレスのワンピースドレスとボレロ」のアンサンブルにして利用度を高めた。材質は横張りのあるジャガード風の絹。色調は淡く光沢がある。シルエットは切り替えの位置をハイウエストにし前中心に深いプリーツを入れ「シフト型」にし若い感じを表現した。ボレロは前中心のプリーツを生かし切り替えに合わせて丈を短かくし、袖はタイトの長袖にした。アクセサリーはこの場合は花のカクテルハットと胸に造花をあしらって、はなやかさを表現したが、その場の雰囲気でボーやブローチなどで変化をつければよいと思う。カッティングやソーイングでは、絹の風合をこわさないでシルエットを出すように心掛けた。

若い人の訪問着   若い人の訪問着