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カートンの構造的分類〔序論〕
横山徳禎  

 パッケージのデザインおよび技術各面が、時代の要求に応じクローズアップされてくると、体系とまで行かないまでも、そこに何らかの形で整理の必要が要求される。例えばパッケージとパッケージングとの言葉の差異について、近頃ようやく一般に理解されるようになったことからも、このことが痛感される。

 ところで、パッケージングに関する定義的なことが全くないのではない。わが国では、JISで一応定義づけられたものがある。すなわち、包装の定義と呼ばれているもので、それによるとパッケージは個装・内装・外装の3つの形態に分類されている。個装とは物品個々の包装で、商品価値を高めるため、また保護するために物品にほどこす技術、状態をいうとあり、内装とは包装内部をいい、物品に対する外的条件を考慮しほどこす技術、状態をいうとあり、外装は外部包装に関することとして分類されている。いいかえると、個装とは物品個々に対するものであり、内装とは物品を輸送・保管に関して都合のよいように考慮するものであり、外装とは文字通り、外側の包装ということになる。

 しかし現実には、どうしてもこの分類の中におさまらないというものもでてくるわけで、この点からも移り変りの激しさと、それに対処すべく何かを見つけ出し、まとめなくてはならないということを痛感する。しかしこれとは別に、いくつかの分類形態もあげられる。包装の目的別、形態別、材料別など、その方法はさまざまであるが、目的にもよるが使用材料別に分類することが一般にはよくおこなわれる方法である。

 ところでこの材料の中で、近年とみに開発が盛んなものにプラスチックがあげられる。一口にプラスチックといっても種類は多く、パッケージに使用する材料形態としてはシート、フイルム、あるいは成型品と多種多様で大巾な伸長はあるにせよ現在のところ、まだ紙の占める位置というものはゆるがない。これには数多くの理由がある。すなわち加工が容易であること、廉価であること、印刷適性がよく訴求性を高めるのに具合のよいこと、保管管理がゆきとどくことなどである。もっとも紙以外に金属、木材、ガラスなども現在のところ利用度が低いわけではないが、しかし紙の位置をゆさぶるところまでにはいかない。

 材料としての紙の便利さは以上のような点であるが、これがいつまでも同じ状態であろうはずがない。もちろん紙そのものがなくなってしまうということは当分の間なかろうが、販売機構の変革また物品の扱い、さらに包装技術の進展などによって形などが変ってくることは予想できるし、また除々に変りつつあるのが現状である。また紙そのものを単独に使用するのではなく、複合体としての包装材料になってくるわけである。例えば、現在でも非常に多くなりつつあるものでは、上質紙にポリエチレンをコーティングしたもの、あるいはアルミフォイルをラミネートしたものなどがこれに当たる。

 前にも述べたように、紙の特徴はその扱い易さということにつきるようでもある。切り込み、折りたたみなどが容易に行なわれ、それによって比較的自由に形づくることができると同時に、紙だけにしか得られない数々の構造体を生み出すことが可能である。ここにおいて紙器、つまりカートンのデザインの必要性というか重要性が生じてくる。かつては貼り箱(後述一厚紙、黄ボール紙を用いた変形不可能なタイプ)がこの代表格であった時代もあるが、現在ではその姿を見ることが少なくなり、かわって変形自在のもので、われわれが一般的に用いるフォールディングカートンというタイプに移行した感が強い。このカートンの特徴は、大量生産方式によるという点が現代のパッケージとしてマッチしているということ、つまり大量生産を前提としな
ければ意味がうすいということである。このタイプは折りたたみが可能であることから、生産性をいちじるしく高めるということがあげられ、また収納、保管、輸送の面でも好都合ということが現状にマッチしている。このことから現在では、紙器というとフォールディングカートンが代表するような感が強い。したがって折りたたみが可能であることがこの種のパッケージの前提と解釈されることも少なくない。(実際には折りたためないものも分類上ふくまれる)

 この紙器は段ボール箱などとくらべて構造体としての強度、つまり外装としてはそれほど期待できないために、ほとんど個装として使用されるが、消費者と直結したパッケージのため、心理的条件を付加することが必要となり、全体の形態に加え、商品としての注目率を高めるための表面のデザインも考慮しなければならない。すなわち促進効果を持つことについても十分な配慮が必要である。商品のイメージがはっきりとパッケージに表わされ記憶されることが大切であると同時に、魅力的なパッケージにすることである。もちろん製造会社名、商品名、商標、内容物の表示、使用法、品質、容量、価格などが記載されるが、これらをまとめることで、他の商品との識別が容易になされるよう配慮することが重要である。これら視覚処理に劣らず重要な面として保護機能を忘れてはならない。すなわち内容物を完全に保護すること。これはパッケージ本来の機能であり、したがってこれを満足するよう何らかの処置が講ぜられなくては、片手落ちといえる。工場で製品が作られ、幾多の輸送機関を経て運搬、保管、さらに販売とい犬態を保つよう保護していなければならない。しかし保護面のみにとどまらず、使用する際の便利さも十分に考慮する必要がある。つまり内容物の保護性が完ぺきう順序で消費者の手元に渡り、消費しつくされるまで、そのものが変質せず、生産されたときと全く同じ状態であっても、それを使用するにあたって不便さがあったのでは何もならない。たとえば粉末状の内容物をパッケージする際に、特殊な器具を使用せず、片手で簡単に操作可能なよう取り出し口を工夫することなどもそのひとつであり、この場合、パッケージそのものが使い易いということになり、それに加え持ち易い形であることも条件のひとつとなる。またそれ以前の問題として、生産性にすぐれたものでなくてはならないということは当然である。

 紙を材料とした個装はこれら諸条件をそなえているわけであるが、このなかで形態と構造に関する部分はおろそかにすることはできない。現在用いられているカートンの大部分は折りたたみが可能であり、折りたたみ不可能なものは扱いに不便を生ずる。これは生産性をことさらに悪くし、強いては商品の価格を上げてしまう結果となり感心できない。紙を用いることは相当思い切った形態を生みだすことが可能であるが、折りたたみが可能であるということと、自動機械による大量生産のコンベアに乗るものとなると全く自由というわけにはいかない。これにより、角柱状のカートンが製作上、生産に適したものであるといえる。しかしすべてがこれですむわけではない。内容物となるものは実に多種多様である。形態、材質、重量さらに価格、販売経
路などに見合ったものにすることは当然で、それらにマッチしたカートンを作りあげることになり、したがってパッケージの形態、構造についてもバラエティに富んだものになる。

 これら個装を中心に用いられるカートンの数は実にばく大なものであるが、現在のところ、その構造形態分類はまちまちである。国により、また生産、流通面の事情が異なることでも分類が変ることがあり、この辺は非常に混とんとしている。そこでカートンを中心にした分類について少し考えてみることにした。

 カートンを大きく分けると次のようになる。ただしここでは段ボール箱は除外した分類である。

 <1> 貼り箱
 <2> 折りたたみ箱
 <3> 糾立て箱
 <4> 成型容器
 <5> カップ類


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