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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

性に眼を留めるためには、作品のテーマの理解やストーリー展開の把握が欠かせない。そのことを改めて念頭に置きながら、受講者からの報告を受けたやりとりのなかで生み出された知見を、講師である筆者自身のことばで、改めてまとめてみる。すでに上記までの十五分程度の展開だけでも、具体的なメディアやモノが多数登場し、多様な仕方で用いられている。王位継承者である女性がいったん失踪を図り、それまでにない自由を経験するようにうながすのは、まずは宮殿の窓である。王女はそれを通じて眺めることで、街とそこで過ごす市井の人び1.メディア・モノ利用から見た『ローマの休日』(1)王女が宮殿から抜け出すまでニュース映画、宮殿、窓、門、配送車。会見場(イス×壇)、ドレス、靴。とと視覚的な関わりをもち、魅了されて近づこうとする。すると今度は相当な広さと多くの部屋と入り組んだ通路や階段からなる宮殿が、またそれをとりまく鉄の門が立ち現れる。それは彼女が街へ出るために乗り越えなければならない実際的な障害物としその作品は若き王女がヨーロッパ各国を訪問する様子を伝える映像から始まる。そのときに用いられているのはニュース映画であり、映画の作品世界のなかで上映され、同時代の多くの観衆に観られたであろう、マスメディアとして機能している。次に王女は窓越しに見える街の夜景と愉しそうな夜の集いに興味をひかれて、宿泊先の宮殿を衝動的に抜け出してしまう。配送車の荷台に隠れることで街へ出ることに成功し、王位の継承者として背負い続ける責て機能する。そして食料や食器などが積まれた配送車が、護衛等に気づかれぬまま、身を隠した王女を運搬するという働きを担い、同時に街や市井の人びとの様子を目の当たりにする機会を用意する[図1]。王女が自由を求めて街へ逃げ出すという出来事を実現しているのは宮殿、窓、門、配送車である。他方で結果として彼女が逃げ出そうと決意するに至る、それまでの訪問先での様子については会見場、ドレスや靴によって示されている。王女は訪問した任の重圧から一時解き放たれる。車の振動によって、ケースに入れられたビンがにぎやかに鳴るなかで、通り沿いのオープンカフェを眺め、バイク(ベスパ)に二人乗りする男女に手を振っていると、医師から注射されていた鎮静剤が次第に効きはじめ、うたた寝をしてしまう。この後にトランプゲームに負けて帰る途中の新聞記者が、配送車から降りたもののそのまま道端で寝てしまった女性と、相手が王女だと知らぬままに出会うことでストーリーは展開する。これは『ローマの休日』の冒頭のシーンであるが、図1.『ローマの休日』配送車の荷台15