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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

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写真は王女がお忍びで街を行く姿を秘かに記録し、新聞紙上で公開することでスキャンダル記事となるはずの素材であった。それが記者にとっていっしょに過ごした時間を想起させ感情を高ぶらせるメディアに変わり、さらに他の誰の目にもふれさせずに二人だけの思い出にしようという意志を伝達するメディアとして機能する。それを受けて会見場に独り残った記者がイタリア赴任以来の自堕落な暮らしをふり返り、立派に王女の勤めを果たす決意をした女性のように、自分も変わらなければならないと決意し会場を去るという場面が最後に訪れる。他にもささやかながら見逃せない工夫があるメディア・モノの利用として、例えば衣服が相手の異性のものを借りて着るという仕方で用いられている。男性記者の室内着を王女が借りて着るという利用法によって、それほど相手に気を許すような関係になったこと、二人の関係がより親密になったことが示される。また同じように親密になるプロセスにおいて、二人が運転したことのないバイク(ベスパ)に乗ることで、市内を暴走してしまうという出来事が生み出されている。その結果警察に捕まるが結婚式へ急いでいたとうそをつくことで解放される。うそだと知らずに被害を受けたはずの人たちも祝福の意を示してくれるなど、ハプニングが二人をより親密にさせる。さらに王女の姿を掲載した新聞により、記者の男性が自室に泊めた若い女性が王女であることを確信し、王女がラジオを聴くことで自分の失踪がニュースになり、みんなが心配していることを認識するがスイッチを切ることで戻らない意志を固めるなど、マスメディアもそれとなく自然に利用されている。他にも街へ出た解放感から短く変えた髪型とそれを街中で見るときに用いられるショーウィンドウ、王女に戻ることを決心し宮殿に帰った晩に従者にいつものように勧められ、しかしもういらないと断るミルク等も、ささやかながら登場人物に用いられたメディア・モノとして印象に残る。3.重要な出来事を生み出すメディア・モノ利用『となりのトトロ』の傘、電報、電話、自転車、バス。図3.『ローマの休日』写真を渡す作品世界の構築におけるメディア・モノの利用という視点から、結果として生み出された映像を探査する。そのときに創造的な工夫が見られる作品は、じつにさまざま時期やジャンルにわたって存在する。例えば日本のアニメーション作品『となりのトトロ』では傘がたいへん効果的に用いられている。特に印象に残りやすいのは、トトロという森の主とされる不思議な生き物が、雨降りによって鳴る楽器として利用している場面だが、改めて観察すると、17