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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

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われるなどの嫌がらせを再び受けた後、復讐という悲劇的な出来事へと導かれていく。このような二重化・複数化を経た一元化・統合化は、他にも『ユー・ガット・メール』がある[図8]。電子メールの普及期という、旧来のメディア環境での利用ではあるが、基本的な構図は変わらない。そこでは大きな書店のチェーンを経営する男性と街の小さな本屋の女性という、対面上は商売敵にある男女が登場する。電子メールを介して互いの対面空間での正体を知らぬままに好意を寄せるようになり、いったん対面する機会を設けたものの、男性の方が先にメールの相手はあの書店の女性だと知って驚き、先にその場から立去ってしまう。そしてその後の互いの関係のあり方について、決断を迫られることになる。また一元化・統合化を図7.『リリイ・シュシュのすべて』図8.『ユー・ガット・メール』図9.『モテキ』経たさらなる二重化・複数化が、ひとつの要所となる出来事を生み出すのが『モテキ』である[図9]。すでにツイッターを介して知り合ったライターとして働く男性が、編集者の女性とより親密になるために、彼女の家に泊まろうとして、とりあえず許される。しかし女性は仕事が残っているといい、隣にあるベッドに男性を独りで残したまま、パソコンで作業を継続する。仕事をしながら時折ツイッターのタイムライン(つぶやき一覧)を眺める女性の姿を見た男性は、「ちょーさみしい」というメッセージを、わざわざ隣に居合わせている彼女へ向けて発信する。女性は画面上にそのツイートを認め、男性の熱意に負けて笑いながら、ようやく彼のほうへ向き直す。5.まとめ創造的な問題解決の痕跡としての映画私たちが見慣れた映画作品は、あらすじや俳優の演技などを鑑賞するだけではなく、制作上直面した問題とそれに応じて図られた解決の痕跡として観察することができる。王女の失踪と復帰、新聞記者の男性との出会いと別れ、それを通じた二人の変化をどのように実現するか(『ローマの休日』)。制作者による直面した問いへの答えとして、例えば王女失踪の経緯は会見場(イス×壇)、ドレス、靴によって、またニュース映画、宮殿、窓、門、配送車を用いることで生み出された。他にも写真(ライター型隠しカメラとプリント)、衣服、バイク、新聞、ラジオなどが出来事を構成し、ストーリーを展開するのに用いられた。20