ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

図2『工藝ニュース』20巻4号より740、袖幅365)、「机片袖」(1060×730×740、袖幅365)、「机脇置」(395×730×740)、「机平A」(1060×730×740)、「机平B」(910×610×740)、「机タイプ用」(910×610×640)となっている。いすは、「小いすA」、「小いすB(せばり)」、「いす廻転A(ひじかけ)」、「いす廻転B(ひじなし)」、「いすタイプ用」の5種が設けられ、それぞれの高さは、小いすは440㎜、いす廻転といすタイプ用の最低高は410㎜となっている。また、寸法はメートル法とともに尺貫法(単位は分)でも記されている。材料は、主要材料と内部材料にわけられ、さらに品等別に指示されており(たとえば主要材料の一等材はなら、かば、しおじ、たも、みずめ、くり、せんだん)、30近くの種類が示されている。また、用材の含水率基準も併記された。構造では、甲板の積層構造などが示され、試験方法は、いすの各部に荷重をかけて試験する方法が示されている。藏田は『工藝ニュース』での規格の解説で、JISの決定に際しては、まず、「実用寸法の統計的な結果と原材の寸法」を参照して「これは守ってもらいたい限度」の寸法が決定されたと述べている。そして他の規定事項についても、これらの基準は「せめてこの部分はこれくらいの程度の仕事・工作はしておいてもらいたい」という意図から設けられたと述べ、「JIS Z 5301」における生産者のための仕様規定の意味を示唆した。このことは、先の懇談会で言われた生産面での指導的役割が規格に期待されたことを示している。2-2「新作事務用家具展示会」「JIS Z 5301」が制定されてから、東京都、全日本家具協会、東京都木製品工業会、中小企業庁の共催、通産省、工業技術庁、工芸指導所後援で「JIS事務用家具設計技術コンクール」が行われ、そこに応募された54社190点のうちの受賞作【図2】から「新作事務用家具展示会」が日本橋三越本店で開催された。単なる文書である規格に則って、具体的にどのような事務用家具があり得るのかがその展示会で示された。「新作事務用家具展示会」についての『工藝ニュース』での藏田周忠の評は、寸法などの事項を決定したJISは「その寸法内でどう意匠されようと、そのことでは意匠家、製作者の自由をしばらない考えである」というJISの基本方針を示すことからはじまっている。そして藏田は、そのJISの基本方針の結果「多様な作品を生むことができ」たとし、出品者のJIS普及への協力を評価した。しかし、全体的には出品者に辛辣な評価を下している。批判の対象は、「手工作の味の世界から出ることができず、工作や意匠のマンネリズムあるいは習得した技術をかたくなに守って、感覚を近代的な洗練にきりかえることができない」家具業界であった。特に、重厚感のある家具に対して「洗練の不足」、「近代性」の欠如が目立っていたという感想を述べ、それにはいまだに事務用家具といえば重厚さのあるものの売行きが良いことが背景にあると指摘している。20