ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

成するという理念をともなって、「量産性をもたせたデザイン」が普及した状況を形成するために、量産という実践を目指した。その志向は、戦後「インダストリアル・デザイン」ということばと、デザインの職能を一般に認知させようとする啓発的な意味をもった『工藝ニュース』に、必然的に規格を取り上げさせた。生産および使用の指導的意味をになうことを期待され出発した戦後まもなくの規格は、いわば当時のデザインの理念と実践を結ぶ要素であった。その意味で、「規格」は、当時のデザインとともに語られる意義があったと言えるだろう。おわりに―その後のJISの流れから「JIS Z 5301」の後、事務用家具のJISは、あらたな規格の制定や、改訂を経て現在に至っている。例えば、事務用家具の主流が木製からスチール製に移行した際にはスチール製事務用家具の規格が制定された。市場の動向にあわせ細かい寸法の修正や、事務能率研究が反映され家具の種類が付け加えられることもあった。1970年代には、建築モデュール、人間工学の視点が取り入れられ大幅に規格内容が変更された。また、戦後のめざましい生産技術の向上、多様化が進むなか、規格そのものの意味、位置づけも変わってきた。なお、戦後の事務用家具標準化の流れは過去の拙稿を参照されたい15。『工藝ニュース』は、「JIS Z 5301」後も継続的に事務用家具のJISの制定や改訂に関する記事を掲載した。事務用家具ではないが、1966年(昭和41年)に学校用家具のJISの大改訂がおこなわれたとき、「JIS Z 5301」の際におこなわれたようなJIS製品の展示会が開催され、「学校用家具のJISとそのデザイン」という記事で展示品の解説がされた16。学校用家具のJISは、事務用家具に先立って人間工学の研究を反映させ、内容が大きく変わった。その記事では、1951年に「JIS Z 5301」が制定された際の展示会で藏田があえて述べたような規格の位置づけや、規格を基にして期待されたデザインの傾向に明確に言及した箇所はなかった。次号の「事務用家具JIS改訂の意図するもの」という記事においても、人間工学研究を利用するという規格の考えかたの転換が示されているのみである17。ましてや戦後まもなくにみられたような「生活」や「インダストリアル(工業)・デザイン」という包括的な視点から規格が語られることはなかった。逆に言えば、「生活」や「インダストリアル・デザイン」との言説上の結びつきのなかで語り得たということが、戦後まもなくの規格の意味であった。今回は戦後まもなくのJISの出発時に注目し、当時の雑誌記事にみられた言説を追った。そこでは規格あるいは標準化が、理論上は指導的意味を担わされており、「生活」や「インダストリアル・デザイン」との結びつきで語られていた。しかし必ずしも現在、規格あるいは標準化が「生活」や「インダストリアル・デザイン」と第一に結びついているというわけではない。それは端的に、戦後まもなくと現在とで22