ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

「影微雪静図」と植物が幾重にも重なり、やがて代謝・循環をはじめ、地中に熱を保ち、落ちた種子たちを包みます。」「植物は、その自意識のあり方も含めて、周囲あるいは遠方の自然と,多様に接触しながら、多様な判断を実行します。受容、攻撃、排除、融合、接触、離脱、抹消、削除・・・植物の判断には、我々が親しんできた<デザイン>をゆるやかに導くようなプロセスが感じられます。」(戸田ツトム『陰影論・デザインの背後について』青土社2012年)戸田ツトムは、私が最も刺激を受けるデザイナーのひとりである。日頃、気になるグラフィックデザインや書籍を調べるとその作者が戸田であることが多い。『陰影論』で述べられる運動/静止、強さ/弱さ、表層/深層と、見失われた微妙な空間に潜む<陰影>の豊かなダイナミズム、などの内容は、新たなデザインの視点を私に示唆してくれる。どこかで共通するデザイン思想があるのだろうか。これを確かめるため、冬の森を歩く。それまで漠然と視ていた静寂な情景のなかに今までとは全く異なる膨大な情報量を深く意識する。モノトーンの雪景のなか、草木は多様に接触しながらネットワークを展開し、エネルギッシュに生命が循環する・・・。この感覚を何らかのかたちで視覚化できないものか。南蓼科の樹形を撮影した画像をモチーフにコンピュータ上で様々な試行錯誤のプロセスを繰り返し、最終的に<筆触>と<動き>を加えることで、背後に潜む生命の循環を表現した。静寂な画面の中に、可視化されない深層のダイナミズムを深く意識化し、制作した絵画作品(P31 ? 35)である。31