ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

葉が揺れる繊細な響きや、柏手(かしわで)を打つ音と賽銭が投げ込まれる音が、一面に敷かれた石畳の上で反射・増幅する。なるほど、空間の神聖さとは、このように生み出されていたのかと感嘆した。またさらに奥へ進むと虫や鳥が鳴き、何らかの動物がうごめく音が響く森が現れ、ときに上空を飛行機が通過する響きに出会う。そこは都会のなかの深い森になっていた。4.日常的な写真利用の観察:写真による探究「写真の写真」とことばによる探究「私たちにとって写真とは何か」のあいだ。さらに美術館への見学調査ではじめて知ったことが、私自身の過去の調査研究と結びつき、改めて考察を深める機会になった。高松次郎といえば一般に影をモチーフにした絵画作品で知られており、本研究所の卒業生でもある倉俣史朗のプロデュースにより、商業空間を制作したことがある。今回の展示でも絵画に限定されない、多様なメディアを用いている様子を見ることができたが、写真というメディアを選択していた時期があったことをはじめて知った[注9]。高松による写真作品は、タイトルにもある通り、写真を被写体にして撮影したもので、まさに「写真の写真」となっている[注10]。一群の作品を眺め渡してみると、通常の写真メディア利用と異なっているのは、被写体の写真が映し出しているもの、例えば都市の風景や建物、観光地を背景にした人物などを、鑑賞者にあえて観てもらわないことにある。その代わりに写真の表面に強く光を反射させて撮影し、プリントからの反射や表面のツヤを強調して写すことで、いまや視覚的な情報を伝達する透明なメディアとなった写真の存在を、鑑賞者の意識のなかで、美しく浮上させようとする[図H,I,J:『PHOTOGRAPH』より引用]。もしこのような利用へ誘うことができたなら、この作品の中の被写体としての写真は、共に映し出されている周囲の壁や床、テーブルと等しいモノとして、鑑賞者の目に再発見されることになるだろう。図H.「写真の写真」図I.「写真の写真」図J.「写真の写真」20