ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

「木版裏彩色」表現研究- 4自由選択科目「構成(版表現)」における指導と制作大久保晃|造形担当Aquira Okubo研究所・総合デザイン科のカリキュラムには、自由選択科目が設定されている。この科目の目的は、原則として専攻や学年を超えて、自由に授業を受けることができ、さまざまな科目を設定することで興味ある分野を経験したり、学年を超えた交流をおこなうなど、より広く、より深く学ぶ場となっている。(カリキュラム要覧より)担当している「構成(版表現)」は自由選択科目のひとつとして開設されている。この科目は、多様な版技法による作品制作を通して各自の専門のどの部分に繋がっていくかを考えたり、複数で制作される「版」の意味や、性質的な部分も誘発できるよう心がけている。具体的には、スクラッチイラストレーション、木版画、シルクスクリーン、エンボス版画の4つを中心に指導している。シルクスクリーン技法以外はデザインから一見遠い感じがするが、これらが切り口を変えて学生のデザイン表現のサポートになることを実感してもらうことが大切である。自由選択という短い時間の中で、多様な版表現を学ぶには限界がある。木版画も時間が許すのであれば、多色刷りの経験をさせたいがかなり難しい。そこで、一版刷りで豊かな表現が可能な「木版裏彩色」を取り入れることにした。木版裏彩色は以前から棟方志功や現代作家の名嘉睦稔の作品に興味を持っていたことや、20代から30代にかけて多くの展覧会でご一緒した人形作家の友永昭三(NHK番組プリンプリン物語の人形制作で著名)氏も平面作品として木版裏彩色をされていたことを知り、一度は挑戦してみたい表現だった。学生と一緒に制作を始めてはや10年、この表現を継続すればするほど新しい表現を探すようになった。現在までに40点ほどの作品が出来上がったが、いずれ発表の機会を持ちたいと思っている。この裏彩色技法は大変古い歴史があり、現在は「うらさいしき」と呼ばれることが多いが「うらざいしき」が正式の読み方である。中国の絵画、日本画などで絵絹の裏から彩色することで色をぼかし、柔らかい画面効果になったり、表に彩色するより色味が複雑になり、より深みを増す。裏塗り、裏具とも言うようである。伊藤若冲もその代表作「動植綵絵」30幅に表だけでなく、裏側からも彩色を施していることが近年解っている。今回は、特に裏彩色に使う画材を多種体験してもらい、紙質と画材の性質の相性も発見する場になったと思う。40