ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

200. はじめに 「収納」に関する書籍の刊行があとをたたない。昨年(2016 年)に刊行された「収納」が書名につく書籍だけをみても、ここですべてを列挙するのは難しいほどである。たとえば、Amazon で検索をしてみると、『物が多くても、狭くてもできる いつまでも美しく暮らす収納のルール』(水越美枝子著、エクスナレッジ)、『ひよりごとの 見せる収納/ しまう収納 ずっと居たくなる 住まいのととのえ方』(ひより著、マガジンハウス)、『探さない収納』(石黒智子、PHP 研究所)、『すっきり暮らすための収納のコツ ― 人気インスタグラマー& ブロガー33人の捨て方、しまい方』(主婦の友社編、主婦の友社)、『スッキリ心地よく暮らす プロ5 人のおうち収納テク』(大木聖美他著、オーバーラップ)、『loveHOME the 収納 シンプルで美しい暮らしを作る片づけルール 決定版』(Mari 著、KADOKAWA)、『忙しい人のための家事をラクにする収納 子どもがいても、働いていても、ズボラでもできる』(梶ヶ谷陽子著、エクスナレッジ)、といった書籍が並ぶ。 「収納」が雑誌の特集記事になることもしばしばである。しかも、「収納」をとりあげる雑誌は住宅、インテリア関連の雑誌に限定されない。むしろ、ファッション誌や育児情報誌、あるいはライフデザインされる「生活」(1)―「収納」からデザイン史研究の射程を考える ー北田 聖子 | デザイン学担当Seiko Kitadaスタイル情報誌とカテゴライズされるような雑誌において、継続的に記事がみられる。たとえば、『CasaBRUTUS』(マガジンハウス)では定期的に「収納」が特集のテーマとなっている。 「収納」に関する書籍や雑誌の記事は、いったい誰に向けて書かれているのか。そこで想定されている住居の「収納」の為手は、上記の書籍や雑誌の読者層から考えるに、世帯のなかで家事の主導的な役割をになうようになる、おおよそ20 歳以上の年齢層に属するかと思われる。しかし、「収納」の為手は、実は幅広い。小学生以下のこどもに「おかたづけ」を習慣化させるドリルまで発売されている(梶ヶ谷陽子監修『楽しみながら身につく! 小学生のための整理収納おもしろドリル』宝島社、2016 年)。つまり、「収納」は、幼少期から誰もがみにつけるべき習慣としてとらえられているようだ。しかしながら、誰もがみにつけるべき習慣である一方で、「整理収納アドバイザー」といった認定資格(特定非営利活動法人ハウスキーピング協会運営)もあり、整理収納のプロフェッショナルの育成もはかられ、専門化されてもいる。つまり、「収納」は、誰もがみにつけるべき習慣でありながら、誰もが簡単にみにつけられる習慣ではなく、その能力には差が生じる。「収納」は、教え、教えられ得るものだと言えよう。教え、教えられ得るということは、「収納」には一定