ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

40作品Cいるし、作品C とD は「ファッションとは(心の)ゆらぎ」だと導きだした作品である。これはなかなか説得力があるワードで、ここで言うファッションは洋服を指すのではなく、女性の繊細な心の動きをモチーフにすることが、ファッションの本質だという落としどころである。そして導きだしたキーワードは「揺らぎ」ということで、水に浮かぶ蓮の花に扮した女性と水に潜る女性でイメージビジュアルの方向性と決定し、制作した。 さらにこの作品の秀でている演出ポイントは“ 光” だろう。ピーカンの光では心の揺らぎの表現は難しい。逆に暗闇に一筋の差し込む光が蓮の花を照らし、あたりを反射していく様がこのビジュアルの深い表情を創りだしている。そして水面の波紋と光の波が見事にマッチしイメージを増幅させているのが絶妙なバランスと言っていい。このイメージの獲得のために都内のプール付きのスタジオを探し出し、光の実験を重ね、当初のイメージ通りになるかを試作し、フィニッシュまで持っていった。光と波の揺らめきという偶然性も計算に入れてのビジュアルづくりは、もはやプロフェッショナルの領域である。水中のもう一点の作品も泡の位置が絶妙になるように粘って撮影をした。モデルの涼しげな顔の演出は苦労したらしいが、不思議な浮遊感も表現されており、心の揺らめきをこちらも定着できている。素晴らしいのは、最終定着が最初の企画アイデアから制作レシピに連動し、計画的におこなわれたという点だ。最初にいいイメージが頭の中に写真のように浮かぶ場合も稀にあるが、どうすれば表現レシピに落としこめることができるのか、今後のビジュアル表現の教育のお手本としておおいに広めていきたい。 そしてここに紹介する最後の作品が“ 作品E”。この作品は直球で、ファッションを“ 野生” と捉え、美しくなりたい貪欲さや肉食的な攻撃性のあるイメージづくりで限定することにより極限まで無駄を省いた非常に明快で気持ちいい作品といえよう。こういったある意味、ストレートでシンプルなビジュアルづくりは結構難解なのだが、見事に定着している。その要因は、“ 野生” の意味を一つひとつエレ作品D