ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

6fig-14_ 旧奈良家住宅の土間fig-15_ アムステルダム(オランダ)の旧市街の街並みは外部的な土の空間であるのに、屋根が掛かっているという外部と内部の中間のような空間である。その空間が広ければ広いほど、我々が想像する現代の住宅とは空間の性質が異なってくる。現代の住宅では、(玄関)土間はさほど大きくなく、外部空間と内部空間がドア一枚でほぼ直接的に接続され、中間領域というような緩衝空間は無きものに等しい。つまり外部と内部という断絶は激しく、その境界線が明快になりすぎていることが、(他人同士が空間を共有する場としての)都市空間と、内部である個や(個の最小限の集合体である)家族の空間に断絶を生み出している。そしてその“ 断絶” は、プライバシーに対する過剰な反応へと繋がり、都市(街)を個人から遠ざけ、個人を内に内に向かわせる結果となっている。日本とヨーロッパの都市に対する意識の違い 以前住んでいたオランダでは、緯度の関係もあり、太陽というものを我々以上に貴重なものとしている印象をもった。僅かな時間しか室内に取り込めない太陽を最大限に享受するため、通りに対しては大きな窓が設けられ、それを元に、建物内部の生活がどんどんと通りに対して視覚的にも空間的にも開放的になっている(fig-15)。オランダ人が通りに面した窓辺の室内空間に花を置くのは、家族のためでなく、通りを歩く人のためであるという話を聞いたことがある。オランダ人はヨーロッパ人の中でも特に他人を許容する度量が深く、色々な意味で寛容でオープンであるが、このような通りと住宅の関係は、他のヨーロッパの国々でも多々見られる。都市という赤の他人がうごめく空間に、“ 断絶“ でなく、