ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

7fig-16_ 旧奈良家住宅の巨大な土間空間fig-17_ 江川家住宅(静岡県伊豆の国市)の巨大な土間空間fig-18_ 中央の柱の右手がいろり、その奥が釜戸どのように空間的に” 連続“ していくかという空間的配列の違いが、これほどまでに民族の性格、意識に影響するのか、と感心したほどである。 日本における、外部から内部への空間配列は、以上のようなヨーロッパ的な空間配列と違い、かなり閉鎖的ではある。だが、建物の中に土間空間という外部と内部の中間領域を形成することで断絶と連続をコントロールしてきたことは、欧米にはないユニークな空間意識で、再評価されるべきものである。巨大な土間は「主」と「従」を反転させる 旧奈良家住宅では、馬屋や食事を作る釜戸などのある土間空間が、それらが必要とする空間以上に広く、巨大な空間になっている(fig-16)。その広さは、以前に訪れたことのある静岡県の民家の江川家住宅にも匹敵する(fig-17)。その土間空間の広大さは、土間の空間とそれから一段上がった室内空間のどちらが「主の空間」で、どちらが「従の空間」かの概念が反転しているように感じる。土間空間は通常、室内空間(部屋)のためにサーブする(何かを提供する)空間で、室内空間という「主の空間」に対しては、「従の空間」である。だが、この旧奈良家住宅では、あたかも巨大な土間空間に、室内空間(部屋)が付随しているように感じほどである。 また、釜戸の空間のすぐ傍に、囲炉裏の空間があり、人が食事したり、憩うことができる空間を設けていることも特殊であり(fig-18)、いかにこの土間空間が(結果的に)「主の空間」になっていたかが分かる。