フォトグラファー(写真家 / カメラマン)になるには

はじめに

日本では2010年代前半までは職業的な写真を撮影する人を「カメラマン」、いわゆるアート写真を撮影する人を「写真家」・「フォトグラファー」と呼んでいましたが、時代の変化に合わせて、現在では「フォトグラファー」と呼ぶことが主流になりつつあります。ちなみに欧米では「Cameraman」という職業は存在せず、プロフェッショナルとして撮影している人は総じて「Photographer」と呼ばれています。 今回は「フォトグラファー」という呼び方に統一して以下に説明をしていきます。

昼間部・夜間部1年生の課題作品 _ ライティングによる空間構成

商業的な写真について

商業的な写真の中にも数多くのジャンルが存在します。デザインを勉強する人にとって近しいところだと、街でよく見る「広告写真」があります。お店に置いてあるカタログやスーパーのチラシなど、皆さんが目にする多くのものはデザインの為に「写真」が使用されています。これらは何かしら特定の <もの> を、多くの(またはピンポイントの)人々に伝えることが目的になります。

商業的な写真を撮るフォトグラファーの分類

人物を撮影する「ポートレイト」、風景を撮影する「風景」、商品やモノなどを撮影する「ブツ撮り」など、フォトグラファーの職種は伝える <もの> によってさらに細かく分類されていきます。また、「広告」「グラビア」「スポーツ」「水中」「建築」「ウェディング」「報道」「ドキュメンタリー」などの撮影するジャンルによる分類もあります。

商業的な写真を撮るフォトグラファーの所属や活動方針

商業的なフォトグラファーには企業や出版社、事務所などに所属して活動する場合とフリーランスとして活動するフォトグラファーがいますが、どちらもクライアントや顧客のニーズに合わせたビジュアルイメージの為に撮影をおこないます。


商業的な写真について
桑沢デザイン研究所と BAUHAUS による共同ワークショップでのイメージビジュアル

作品的な写真を撮るフォトグラファーについて

一方、商業的ではなく個人(またはグループ)で、自らの意思を反映して作品を制作するフォトグラファー(写真家)もいます。こちらはクライアントが存在しないので、撮影することが直接的に金銭に還元される保障はなく、制作した作品の売り上げが収入の中心となります。制作された写真作品には、ビジュアルイメージとともに強いメッセージ性が含まれているのが特徴です。 近年では商業的にフリーランスとして活躍するフォトグラファーの中にも、積極的に作品を制作して発表をするフォトグラファーも多くいます。

フォトグラファー(カメラマン / 写真家)になるには

商業的なフォトグラファーとして仕事を得るためにはいわゆる下積み / アシスタント と呼ばれる経験を通過することが一般的です。代表的なルートは下記になります。

直アシ

活躍している特定のフォトグラファーのもとで働くアシスタント(通称:直アシ)は、師匠となるフォトグラファーとの関係は元より、そのクライアントや撮影スタッフとの信頼関係も増えやすく、独立の際に仕事を得やすいという利点があります。

スタジオ、ロケアシ

撮影スタジオでのアシスタント(通称:スタジオマン)、ロケでの撮影をアシストするロケアシスタント(通称:ロケアシ)などは、特定のフォトグラファーではなく様々なフォトグラファーの現場で仕事をするため、直アシをするよりも撮影の引き出しを増やすことができます。また企業や事務所の撮影部に入れば上司となる先輩からの指導に加え機材を自由に使用できたりします。

SNSの活用

近年ではSNSで人気となり、商業的に成功するフォトグラファーも目立ってきています。 以上のように大まかなルートは想定できますが、センスと技術(スキル)があれば仕事を得られる業界ではあるので、まずは技術(スキル)をどこで手に入れるのか? センスをどのように磨くのか? が考えるべきポイントになるでしょう。 作品制作を中心とする場合も、もちろんセンスと技術(スキル)は重要ですが、まず伝えたいメッセージをどのように表現するのか? という部分がポイントになります。その後からメッセージを伝える為に必要な技術を習得する必然性が生まれてくるケースが多いと思われます。


フォトグラファー(カメラマン)のスキル 昼間部2年生の課題作品 _ 人物の撮影

フォトグラファー(カメラマン)のスキル

2022年の現在ではほとんどの人がスマートフォンを手にして「写真」を撮ることが当たり前になっています。では、誰も彼もが「写真」を撮ることができるようになった現代のフォトグラファーに必要なスキルとはどのようなものなのでしょうか? 大まかに挙げると、◎カメラが扱えること ◎光が扱えること ◎コミュニケーション能力 の三つが挙げられるでしょう。

カメラが扱えること

実際には例外となるフォトグラファーも数多くいるのですが、一般的にはカメラを扱えることがフォトグラファーの必須条件となります。なぜなら、カメラは『道具』ですので、これを上手く扱えないと考えているようなビジュアルイメージを制作することが困難になるからです。

光が扱えること

またビジュアルイメージを考える上で「ライティング」を考えることもフォトグラファーの重要な仕事です。本質的には、カメラは光を集めて画を作り出す道具ですので、光の影響がどのようにビジュアルイメージに関わるのか? を理解することがスキルアップのコツになります。 この二つのスキルについては、下積みであるアシスタントの時にしっかりと習得する必要があります。特に「ライティング」に関しては様々な方法とそれに対応する機材の種類があり、この方法や機材の使い方 / 特性を知らないとクライアントや撮影チームにビジュアルイメージを提案する幅がおのずと狭くなってしまいます。このように考えると、アシスタントを経験することの大事さを理解していただけるのではないでしょうか? 道具を知ることもスキルの一つなのです。

コミュニケーション能力

ビジュアルイメージを共有するという点において、当たり前ですがコミュニケーションの能力も重要なスキルだと言えます。撮影の現場でフォトグラファーは、最終ゴールとなるビジュアルイメージに向かって進んでいくチームの指揮官という立場になります。クライアントやアートディレクターとイメージを共有し、アシスタント(現場によってはモデル、スタイリスト、ヘアメイクなど)へ的確に指示を出して、共有したイメージを現実の形に仕上げていきます。円滑なコミュニケーション作りが雰囲気の良い現場を生み出します。

フォトグラファー(写真家)のスキル

一方、作品の制作を中心に活動するフォトグラファーに必要なスキルとはなんでしょうか。 先の項目でも書きましたが、伝えたいメッセージがあることを表現するスキルが重要になります。この場合のスキルは『上手く写真を撮れること』とは別のベクトルに向かっています。表現を成立させるスキルが重要になります。 しかしここでも問われるのはコミュニケーションのスキルです。コミュニケーションも当然上手 / 下手があるのですが、より重要なのは伝える意思があるのか? ないのか? という部分です。自己満足としての表現を続けていくと、メッセージの受け手が誰もいなくなってしまいます。 また制作の(時間的、金銭的)余裕を作れるか否かも大事なポイントです。フリーランスのフォトグラファーとして独立することで、そのような余裕を持つことのバランスを選択できるようになる、という方法もあります。

デザイナーとフォトグラファー

商業的なシーンでは、アートディレクターやデザイナーとフォトグラファーの関係は密接になります。クライアントの要望をビジュアルイメージに落とし込む際に、アートディレクターとどれだけイメージを共有することができるのかが、撮影現場での仕事のスピードを決定するといっても過言ではありません。また撮影後の「写真」を実際に扱うアートディレクターやデザイナーとの意思疎通が上手くいくことで、より良いアウトプットを生み出します。 特に撮影後の写真の現像 / 色味調整やレタッチの作業では最終的なアウトプットの作業を担うアートディレクターやデザイナーとの細やかなやり取りが必要となるケースが多くなります。デザインに対する理解度もフォトグラファーにとっては疎かにできないポイントです。


【社会的役割】 昼間部2年生の課題作品 _ 写真による空間構成

社会的役割

写真が誕生したと云われる1826年からもうすぐ200年が経とうとしています。誕生とともに、写真はその記録性から、それまで絵描きが請け負っていた肖像画と取って代わって、肖像写真というジャンルで拡まっていきました。記録性という側面からドキュメンタリーや報道というポジションでは最重要メディアとして扱われています。また、20世紀以降はアートとしての需要も高まり、写真はビジュアルイメージを作るために最適な選択肢の一つとなりました。 2010年代以降はSNSがコミュニケーションツールの筆頭となり、「写真」こそが簡潔でスピード感のあるイメージの交換に最適なメディアになりました。現在ではSNSからも多くのフォトグラファーが誕生し活躍の場を広げています。 一方、広告を始めとするビジュアルイメージ制作においては「写真」から「映像」に主役の座が移りつつあるようにみえます。しかし、人はたった0.5秒でイメージを判別するといわれ、「写真」で伝えられるビジュアルイメージの圧倒的強さは揺るがないでしょう。 良い「写真」を撮れるフォトグラファー(カメラマン)の需要は無くなることはないでしょう。さらに映像へとシームレスに活躍できるフォトグラファーが時代に求められていると感じます。

まとめ

SNSの例からもわかるように、現在では30年前と比べてフォトグラファーになるための扉はかなり大きく開かれています。しかしその分眺めの良い場所までの道のりは遠くなったように感じます。しっかりとした基礎を身につけることが頂上へ辿り着く為の秘訣です。そのため、デザインを学びながら一緒にセンスとスキルを身につけるという方法もお薦めです。

この記事の監修者

桑沢デザイン研究所

 ビジュアルデザイン分野専任教員
 鈴木一成

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