日本で最初の『デザイン』学校で未来を創造する【専門学校桑沢デザイン研究所】

アクセス
MENU
LINE YouTube Instagram Twitter Facebook
ホーム 就職・キャリア 卒業生インタビュー YouTuber/ OKUDAIRA BASE奥平 眞司さん
月刊インタビュー 月刊インタビュー

【月刊インタビュー】桑沢卒の素敵なあのひと
今注目のクリエイターにお話を伺う連載。第3回目は、DIYや料理を通して「日々の暮らし」を発信しているあのひとです!


YouTuber/ OKUDAIRA BASE 奥平 眞司さん

YouTubeチャンネル「OKUDAIRA BASE」主宰。
福祉系大学卒業後、桑沢デザイン研究所 夜間部 専攻デザイン科 スペースデザイン専攻卒業。
料理やDIY、物選び、整理整頓、家族や友人を招いてのもてなし、一人キャンプや旅行など、自分の時間をとことん楽しむ方法をYouTubeにて配信。
動画制作、キッチンツールのデザインなども行っている。

―― 本日は宜しくお願いします。今日のために、学生の方に見て欲しい動画をピックアップしていただきました。こちらを選ばれた理由を教えてください。


自宅で両親をおもてなしする動画です。過去にもこういったテーマで撮影していますが、「もてなす」という行為には、相手を思いやって事前準備する必要がありますよね。道具をつくる時も一緒で、細やかな気遣いが大切だと思っています。今回は "相手を思いやる"という テーマで、この動画を選びました。

―― 学生に見て欲しい映像とお願いしたので、DIYを選ばれるかなと思っていました。

僕が桑沢で学んだのは、DIY的な技術ではなく考え方だと思っています。
在学中の学生の方には、デザインという行為の根幹的な部分について感じてもらえたら嬉しいです。
デザイナーって、すごくキラキラしたイメージがあるじゃないですか。でもデザイナー自体がメインプレーヤーではなくて、どちらかというと医者みたいな感じというか。
相手がいて、その人が困っていることを考慮したデザインを生み出していかないといけないな、と考えています。




デザインを志したきっかけと、桑沢を選んだ理由

―― 桑沢入学前のお話を伺わせてください。

愛知県出身です。地元の高校を卒業後、福祉系の大学に進学しました。その大学は知多半島の海や山に囲まれた自然溢れる地域にあったので、大学生が遊びに出かけるような場所がなかったんです。何をしようか考えながら海岸沿いを歩いてたら、たまたま流木が落ちていて。それでサイドテーブルを作ってみたことをきっかけに、インテリアを好きになっていきました。デザインに対して興味を持ち始めたのは、その頃からです。また、遊びに行く場所が少ないので、よく友達を家に呼んでおもてなしをしていました。ご紹介した動画の内容と、全然変わらないですね。

―― 大学で学んだことは、現在も活かされていますか?

特別講義のような授業はよく覚えています。主に経営者の方が登壇するんですが、お客さんの意見を聞きすぎると自分の商品に対してトゲがなくなる、といった話は印象深かったです。

一方、大学1年生の後半くらいからデザインを志して、色々調べていました。その時に、谷尻誠さんの「1000%の建築」という本と出会ったのはすごく大きかったです。それこそ桑沢の「概念砕き」という考え方を説いている本です。その視点を持っていなかったので、すごく面白いなと思いました。デザインを志してからは、アルバイトをしながら月に1回東京に行って、美術館や建築も見に行きました。

―― 大学卒業後、再び学び直すことについてご家族からどういった反応がありましたか?

大学に入ってからすぐ相談したのもあって、大反対されました。それでもInstagramでDIYや部屋作りに関する投稿をしていたら、企業や雑誌の方から徐々に声がかかるようになって。20歳頃から取材をしていただいたり、DIYについて記事を掲載していただけるようになったんです。
それを見ていた両親は、最終的にいいよと許してくれました。

大学卒業後に学び直す場として、桑沢を選んだ理由は2つあります。1つは谷尻さんの本にも共通する「概念砕き」という考え方を学べること、もう1つは著名なデザイナーの方を多く輩出していることです。大学卒業後だったので、夜間部の方が金銭面の負担も少なく、通いやすいのでいいなと思いました。

―― 入学試験のための準備はどうされましたか?

大学時代にデッサンスクールへ通いながら、インターネットで公開されていた過去問を参考に勉強しました。当時の入試課題は、好きな空間に置くインテリアを提案してくださいという内容だったと思います。試験では泊まれる本屋に置くインテリアを描きましたが、絵が下手すぎてこれは何だって先生に突っ込まれました(笑) 

また試験勉強とは別に、インテリアコーディネーターと照明コンサルタントの勉強もしました。インテリアコーディネーターの2次試験は受けていませんが、桑沢入学前に知識をつけておいた方が良いかなと思ったので、かなり勉強しました。

授業課題と学生交流で深まったデザインの考え方

―― それでは入学後のお話を伺わせて下さい。「6×6ハウス」という授業課題が印象深いそうですね。

1年前期の課題で、「6m×6mの狭い敷地に家を建てる」という課題があります。家族4人暮らしとか、冷蔵庫を付けるとか、細かい指定をクリアした上で、快適に暮らせる家をデザインするというかなり難しいテーマなんです。どう考えても狭すぎて、快適に暮らせないんですよ。今思えばすごく面白いテーマで大好きなんですが、その頃はまだ考え方が浅くて、見た目重視でデザインしていました。1年次はそういった考え方をしていて、良くなかったと思います。

最終的なプレゼンでは、先生にどこかしら突っ込まれるのですが、どうしてその構造にしたか、すぐ答えられなかったんです。核となる構造や、どうしてそのデザインになったかという人に対する気遣いが大事なんですよね。先生からたくさん指摘してもらって、多くのことを学びました。

広いスペースがあれば、家具をどこに置いても良い感じには見えます。でも狭い家を考えることによって、最小限でどう快適に過ごせるかを工夫しなければいけないんです。色々なポイントを削ぎ落とす必要があるので、快適さと天秤に手にかけながら、考えるのが楽しかったです。


―― 建築模型を作ったのは初めてでしたか?

そうですね。本を見たり、先生に聞いたり、詳しい先輩に聞いて作り上げました。朝から学校で作業をしていると、 隣で同じ課題をしている人がいたりするんです。(※昼間部・夜間部で共通課題を行っています)。それで話しかけてみたりして、横の交流を多く持ちました。入学当初にある交流会でも、多くの人と顔見知りになれたので良かったですね。桑沢の校舎が狭いのをマイナスに感じる方もいるかもしれませんが、狭いからこそ人との距離が近くて、交流できるのが魅力の1つだと思います。

自分の作品を、クラスメイト以外にプレゼンするっていうのも結構やってました。
例えばビジュアルデザイン専攻の人とか、異なる専攻の人に作品を見てもらいましたね。プレゼン後に意見を聞いたりして、とにかく客観的な意見を貰うということを大事にしていました。そういう環境で過ごせたのが、本当によかったと思います。

夜間部のクラスメイトに関しては、やはり社会人が多かったです。僕自身は単発のアルバイトや派遣に登録して、課題に集中できる時間を確保するようなスケジュールを組んでいました。




―― 卒業時に作られた作品について、コンセプトをお聞かせください。

夜間部スペースデザイン専攻では「3」がコンセプトでした。色々考えていた中で、2だと囲みは生まれないですが、3だと囲みが生まれると着想したんです。3本の木が立っていて、森の中にいるような安心感を得られるチェアをデザインしました。

自分の卒業制作が優秀賞に選ばれた時は、かなり嬉しかったですね。それまでデザイン的に相手を思いやれていない作品を作っていたので、入学前に自分が理想としてきたというか、学びたいと思っていたことが具現化できたと感じました。

デザイン的な視点を基に広がる活動の場

―― 卒業生作品展の直後に、とある動画がヒットしたそうですね。
桑沢在学中も動画制作をされていたんですか?

桑沢入学直後の4月に、1本目を投稿しました。DIYや暮らしについて発信していきますという内容だったと思います。元々Instagramで発信していて、短い尺の動画も作っていました。ただ投稿できる動画の尺が1分間という短い時間だったんです。それで、もうちょっと長い尺で作りたくて、自然とYouTubeに移行しました。最近だとYouTubeで分かりやすく動画制作について説明してくれている方もいるので、独学で勉強しました。

暮らしのvlogというシリーズを大体100超まで発表しているんですが、その第1話を投稿したのが2019年の2月です。暮らし系のコンテンツが流行っているのか、それを機に更に多くの方に見てもらえるようになりました。

―― それでは卒業後のお話を伺わせてください。

卒業後は暮らしについて発信する活動をメインにしたかったので、仕事は在学中から続けていたアルバイトとUber eatsの配達をかけもちしていました。桑沢入学当初は、デザイン事務所に就職したい気持ちもあったんです。でも学んでいくうちに、デザイン思考を身につければ何をしても楽しいんじゃないかなと思ったので、就職はせず、YouTube活動とアルバイトを両立していました。

そんな中で、暮らしのvlogというシリーズがヒットしたのは大きかったです。そこからYouTubeを軸にして色々なことが進み始めました。今では自分のチャンネル運営はもちろん、キッチン用品のデザインや、映像制作も請け負っています。本の出版、料理イベントへの出席、コーヒー豆をブレンドしてオリジナルを作ったりもしています。

―― これまで制作した中で、ご自身が気に入っている動画はありますか?

たくさんありますが、「暮らしの中で響いている音」に注目した動画をピックアップしました。やはり映像に注目されがちですが、着目点を変えて、音だけにフォーカスを当ててみたのが特徴です。
桑沢で学んだことで、窓を開けたら風が気持ちいいなとか、今日は光が美しいなとか、昔は見えなかったものが見えるようになったんですね。そういう視点を持っていなかったら、感じられない部分だと思うんです。だからデザインを勉強していない方でも、僕の動画からそういった繊細な視点を感じてもらえたら嬉しいです。


※ASMR:人間が聴覚や視覚から感じる反応で、脳がゾクゾクするような心地良い感覚のこと。

―― 今日最初にお伺いしたおもてなし動画もそうですが、基本的にデザイン的な視点を元に制作されているんですね。

そうですね。桑沢で学んでから世界を見る目が変わって、とても良い影響を受けていると思います。例えば自分の部屋なんですが、入学当初は物で溢れていて、ごちゃごちゃしていました。それこそ先生に言われた「本当にこの柱は意味があるのか」じゃないですけど、本当にこれは必要なのかっていうことを考えるようになってからは、部屋が整理されていきました。

―― そうなんですね。最近ではスプーンのデザインもされたそうですが、どういった経緯で制作されたのでしょうか?

動画を見た企業の方から、一緒にデザインしませんかと声をかけていただきました。日常生活で不便に感じているものをデザインしたいと思って、着目したのが計量スプーンです。みなさんが想像する計量スプーンって、ステンレス製で、大さじ小さじはあれど肢が短くて瓶の奥に届かなかったりしませんか?そういった不便に感じる部分を洗い出して、デザインを検討しました。

幅広い用途で使えるスプーンにしたかったので、サオという硬い木材を採用しています。熱伝導率が低いので直接味見ができたり、マドラーになったり、肢をカットできるようにして好きな長さに調節できるようになっています。この木材のおかげで、4mmというかなり細い設計ながら強度を保つデザインを実現できました。

コンセプトからスケッチ、図面を引いて素材を決めるところまで自ら携わっています。大さじ小さじで1セットにして1000セット以上を生産したんですが、大好評で販売開始2時間で完売しました。また注文しているので、9月頃に再度販売しようと考えています。

―― 本の出版についても、出版社からお話があったんですか?

そうですね。去年の夏くらいに、YouTubeで発信している暮らしについての本を出しませんかというお話をいただきました。自分が制作している内容を本として出版するのは、すごく嬉しかったです。

朝昼夜の順に構成されていて、写真の入れ方や文体も自分が好きな雰囲気を取り入れてもらいました。朝昼夜という構成にした理由は、桑沢の先生がよく言っていた「何かを見せる時はストーリーを作りなさい」という教えにすごく影響を受けています。朝起きてから1日がスタートして、最後の方に読み進んでいくと就寝して1日が終わるという。この構成を決めた時は、これだ!って思いました。自分の考え方や暮らしについての考え方を、感じてもらえたら嬉しいです。

もちろんYouTubeを見て本を購入してくれる方はいるんですけど、その逆がすごい増えたんです。書店にこの本が並んでいて、僕を知らない方が本を購入してから動画を見てくれるんですよ。全国販売しているので、多くの方に届いてくれてすごく嬉しいですね。

―― それでは最後に、2つほど質問させてください。まず1点目は、大学卒業後に学び直して得たものはありますか?

大学生の頃なんて既成概念の塊だったんで、桑沢で学び直してから色々なものが見えるようになったと思います。デザインを学んだからといって必ずデザイナーにならなくても、そういう考え方があれば意外と何をしても楽しいんじゃないかなって。やっぱり考え方を身につけるっていう点では、学び直してすごく良かったと思います。本当に1本の軸ができました。

―― ありがとうございます。ではもう1点、今後の展望があればお聞かせください。

スプーンからデザインさせていただいて、今後は陶器のフライパンなどキッチン用品から手がけていく予定です。いずれは家具や、空間までプロデュースできたらいいなと思っています。


インタビュアー:はやしわかな
桑沢デザイン研究所 総合デザイン科 プロダクトデザイン専攻卒業。
海外で働きたい気持ちが強く、卒業後すぐに海外就職。
建築系3Dアプリの開発に携わり、デザイナーやエンジニアをサポートする仕事に就いている。
<2020年7月>
卒業生一覧に戻る