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「基礎教育」雑感
真鍋一男  

 大謀網とは定置網の一つである。その規模と型式は地方によって差異があるらしい。富山湾や佐渡では年中操業するが,芦名沖では3月から10月初旬にかけて漁をすることになっており,富山の氷見から毎年ほぼ同じ顔ぶれの漁師の一隊がやってきて,土地の人も少数加わり約40名で労働している。

 ここ「大楠漁場」の網は比較的小規模であるという。沖合4千米の海上に,小学校の運動場2つくらいの広さにわたって網を定置する。よく見える眼ならば海面 に靄のない晴れた日に陸から望んでその標識の旗竿を認めることができる。秋の二百十日か二十日ごろになると大きな台風がきて網は破壊され,それをしおに網を引きあげる。設置するにも撤去するにも1週間くらいの重労働を要する。日々の漁穫は海水の温度,透明度,潮流の変化に左右され,またもちろん魚群の回遊がとぎれれば零となる。

 わたくしはふとしたことからこの漁場の人びとと親しくなり,彼らの労働と生活の現場で写 真をとることを許された。3年間つづけてきたが,最初の1年分のネガティブは火災で失ない,2年目はコダクロームXに終始した。

 次ページ以下にあるのは3年目,昨年9月までのものから抜きだしたものである。なんのために写 すのかという問いにはまだ答えられない。とにかくまだうまくうつせないのでつづけて撮ることになる。一つには自分のためのエクササイズだろう。見ることの練習であり検証であり,またあわせて当用の写 真術の習熟という意味であるが,これは答えではない。なぜそれをそこでするのかに答えていないから。しかし私は昨年の分を整理してみて,自分のこのような仕事をひとにみてもらおうという気持がおこってきた。そしてこのたび研修委員会の了解を得たので,生半可のままながらここに発表の場をいただいて大方のご批評ご指南を仰ぎたいと思う。



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