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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

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先々でさまざまな歓迎の場に必ず出席しなくてはならない。しかし若い王女にとって、それはいらぬ緊張を強いられるだけでなく、くり返し同じ挨拶をすることを余儀なくされる、退屈極まりない時間にほ2.メディア・モノ利用から見た『ローマの休日』(2)新聞記者と王女の出会いから別れまで写真(ライター型隠しカメラ×プリント)。衣服、バイク、新聞、ラジオ、髪型×ショーウィンドウ、ミルク。かならない。舞踏会が開かれる歓迎の場は一段高くなった壇とそのうえに設置されたイスによって構成され、そのうえに立つゲストの王女と迎える側との関係の上下が高低差で示される。また儀礼的な挨拶が続くなかで、外からは見えないロングドレスの中で靴を脱ぎ、脚を遊ばせることで、王女がいかに退屈しているかが示される。またイスに座ろうと後退したときに足を入れ損なうことで、改めて元の立ち位置へ戻って履こうとしなければならず、まるで幼い子どものように従者の手を煩わせてしまう[図2]。このような日々が続くなかで、王女は癇癪と一時的な錯乱を起こし、医師から鎮静剤を注射され、しかし居ても立っても居られずに、街へ出ていこうとするに至る。『ローマの休日』では王女の失踪後に、新聞記者の男性との出会いという出来事が生じている。なかでも写真(カメラ、プリント)は、新聞記者の男性による王女への関わり方が、全編を通じて大きく変化するプロセスを実現するメディアとして働いている。まず新聞記者がカメラマンの協力を仰ぎ、カネになるスクープ記事を書くために、王女を市内観光に連れ出し、ライター型の隠しカメラでその様子を隠し撮りする。しかし印画紙へとプリントされた写真をカメラマンが持参したとき、素晴らしい出来映えであるにもかかわらず、記者はそれを掲載し記事にすることを諦めてしまう。写真を眺めて王女といっしょに過ごした時間を想起していると、彼女への恋愛感情があふれ出し、スキャンダルのネタとして公にさらすという、当初の気持ちには戻れない。結局、王女としての勤めに戻り、会見場で見事に王女としての務めを果たしている彼女を前に、初めて出会ったふりをして自己紹介を行い自らの正体を明かし、記念撮影時にライターを使用することで、それが隠しカメラであったことを王女に気づかせようとする。さらに記者は会見時の問答を通じて他の誰にも知らせないことをそれとなく伝えた上で、カメラマンを介して王女へ写真を手渡し、二人だけの私的図2.『ローマの休日』脱げた靴な思い出にしようと心に決める[図3]。16