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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

不思議な生き物と人間の子どもたちとの関わりに加えて、少年と少女との関係が微細に変化していくプロセスをそれとなく、しかし確かに実現している。ある日、少年は学校の帰り道に、雨宿りをしている姉妹の前を通りかかる。少年は郊外にある我が家の隣に都会から引っ越してきた姉妹を気にしているが、少年期特有の照れから、からかっては嫌われるという関係になっていた。この日もいったんは傘を深く差すことで、あえて目線を合わせることなく、通り過ぎようとする。しかしほどなくして立ち止まり、また来た道を戻って、傘を広げたまま、二人の前に差し出す。少年が濡れてしまうために、受け取るかどうか戸惑う姉の少女を前に、少年は「ふんっ」と受け取りを促した後で、そのまま傘を地面において走り去る[図4]。こうして少年から間接的に渡された傘を用い、姉は妹と二人で傘に入って帰宅した後、今度は傘を返しに少年の家を訪問する。土間で対応してくれた少年の母にお礼を伝え、間接的に傘を返し、それを別の部屋から盗み見していた少年は密かに喜ぶ。このように傘が少年と少女のあいだで行き来することで、少女はあまり好きではなかった少年のことを「カンタさん」と呼ぶようになり、二人がより親密に関わることを可能にする。さらに傘は姉妹とトトロという不思議な生き物との出会いでも用いられる。姉妹は傘を手渡すためにバス停で父親の帰りを待っている。待ちきれずに眠ってしまった妹を背負いつつ、姉がバスの到着を待っていると、傘で遮られた視野の隅に、獣のような毛に覆われた何者かが、脚をかいている様子が突然、目に入る[図5]。そこで姉である少女は、傘を上に上げて視野を確保し、眺め上げると、そこにいた不思議な生き物がこちらを眺め下ろし、互いの目が合うという出来事が生まれる。そこで姉は父のために用意してあった傘を手渡し、使い方を教えると、生き物は広げた傘に落ちた雨粒が鳴ることに驚き、改めて樹に衝撃を与えて大量の雨粒を降らせる。そして鳴り響く音を楽しんだ生き物は、迎えに来た猫のお化けのバスに乗り込み、そのまま傘を持って行ってしまうが、そのことによって、後日二人がいっしょに風に乗るように誘われ、傘を差した生き物と図4.『となりのトトロ』傘を再び差し出す図5.『となりのトトロ』傘越しに見える爪と脚18