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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

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桑沢デザイン研究所教員研修会レポート2012

暮らすこの村では、女性がコミュニティの重要な役割を担う伝統的習慣の共同体が維持されている。小さな経済圏や文化の継承のありかたなどに学ぶことが多くある一方、少子高齢化や若者の都市部への流出など、急速に発展してきたアジア共通の課題がこのような小さな村にも存在することにもどかしさを感じた。観光を受け入れて、手工芸品や手料理などの販売で現金収入を得る「観光村」への変化も、村の伝統習慣の継承のためには必要なのだろう。次に訪問宿泊した森林寺院では、タイの人々と仏教寺院との関わり方を学び、またアチャン(タイの僧侶の敬称)の説法と談話ではデザインの真の力について諭された。「ピラミッドを逆さに建造するほどの人間の叡智と技術は素晴らしいが、そのまま使うは危なっかしくて見ていられない。デザイナー諸君もその力を顕示せず、人の為に正しく使え」と戒めを受ける。私たちに接していただいたアチャンはベトナム系アメリカ人で、仏門に入る前はグラフィックデザイナーというバックグラウンドをもつ。私たちになじみある言葉を織り交ぜて、人間の未熟さが故の物質主義やそれに係る経済や地球環境マーケットの風景は、実はノスタルジックな水上貿易を再現した完成されたテーマパークだ。訪れたこのマーケットでは代わりに、店の奥に居住スペースが覗きこの場所に根付く実生活を垣間見ることができる。「水上」というより寺院の門前市場が河畔にせり出したウォーターフロントマーケットであり、故に辛うじて水運の衰退から逃れ、かつ地元のコミュニティが残って生き延びたローカルマーケットだ。甚大な被害を出した2011年の洪水を機により一層加速する国の治水灌漑整備のスピードに、この小さなマーケットは耐えられるか。観光マーケットへの転換も存続の道の一つだろうが、願わくは地域コミュニティを保ち続けるいつまでも未完成な地元市場であり続けてほしい、というのはよそ者の身勝手だろう。それぞれの訪問地で各々が得たこれらのファインディングスをベースに、参加者と共にこれからの暮らしとコミュニティについて議論を深め、グループ毎の提案を深夜までかけてまとめ上げた。「サステナビリティの糸口」として翌日のランシット大学での国際会議にて報告する。問題・社会問題をあげ、そして叡智と慈悲の心が生み出すそれらへのベスト・デザインのあり方を丁寧に説いていった。私たちは、わずか一泊ながらアチャンとの瞑想や読経、寝食をともにして、彼らの物質的に質素なライフスタイルが手段ではなく結果であることを体で理解できたような気がした。最後に立ち寄ったのは、タイ観光ではおなじみの水上マーケット。だがここには、ひしめき合う木船や活気で賑わう屋台は見当たらない。古来より水運とともに発展してきたタイの伝統的な水上マーケットの多くは、20世紀に入り道路整備に伴って陸上に移設されはじめ、1950年ころからは氾濫対策で河川に水門が設置されるようになると水路もその役割を陸路に譲ることになった。既にタイの水運はほぼ機能していない。バンコクのあの賑やかな水上明日のカンファレンスでのプレゼンテーションに向けて、これまでのトラベリングワークショップで得たファインディングスをプロポーザルにまとめる。バスでの二日間の長旅にもめげず、各チーム、ホテルロビーで深夜まで作業が続く。各国デザイナーでいきなり構成された混成チームながら、それぞれのスキルで素晴らしいチームワーク。三日目、デザイン国際会議“WORK INPROGRESS”が開幕。プログラムは、経済発展著しいアジアにおけるサステナブルデザインと社会変革をテーマとしたゲストスピーカーによる講演、ラウンドテーブル、そしてトラベリングワークショップのグループごとのファインディングプレゼンテー60