ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

1.事務用家具の規格制定にむけて1-1「商品標準」決定から規格の制定へ第二次世界大戦終結以前にすでに、事務用家具は全国的な規格統一をはかる標準化事業の対象となっており、1934年(昭和9年)に「日本事務用卓子及椅子単純化規格」、1943年(昭和18年)には事務用机、椅子の規格型が決定されていた。終戦直後、事務用家具の標準化は、「戦後窮乏の極にあった国民生活を安定し、その合理的再建を図るため緊急必需物資特に日常生活用品の急速な生産と出廻りを確保する」2という目的から再び政府によって取りざたされることになる。1945年(昭和20年)10月、特許標準局に商品標準化委員会が設置され、「商品標準化」の開始にともない、事務用家具、特に「事務用机」、「事務用椅子」、「事務用整理棚」の「商品標準」が決定された3。戦後再建された工芸指導所の機関誌『工藝ニュース』では、商品標準化が工芸指導所再出発の第一歩にあたる活動の一つとしてとりあげられた。復刊第一号では、同所員が商品標準の研究に携わったことが述べられている4。商品標準の内容をここで詳しくみることはしないが、それが戦前の規格と比べて特徴的だったのは、ユニット式の家具があらわれたことであった。戦前でもすでに木檜恕一をはじめ、豊口克平、剣持勇などがユニット式家具を評価していたが、戦後の「資材不足の折から、国民の最低生活に必要な生活必需物資を確保するための合理化、標準化」5において、採用されることとなった。商品標準の事務用家具が『工藝ニュース』において取り上げられる際も、寸法や材質といった規格の重要な項目がどのように決定されたかというよりは、机、本棚、整理棚に関しては各ユニットが要求に応じて任意に組み合わせられるという特徴が強調された6。ただ、事務用家具の商品標準は、それが決定された当初から、あくまで終戦直後という状況での応急処置のための規格であると位置づけられ、品質や試験方法などに関しての厳密な規定がないという点から内容の不十分さが指摘され見直しが求められていた。加えて、各官庁が商品標準を無視して家具を注文するという問題も生じていた7。また、近い将来にオフィスだけでなく学校などの建築物の復旧が進み、家具が大量に必要となってくることを見込んで、家具に関する規格を商品標準というかたちではなく国家規格として定めたいという主張もあり、規格案作成のための議論がなされた。そのため、商品標準の決定後も、工芸指導所では事務用家具の試作研究が進められ、商品標準より充実した規格制定に向けての議論が続けられた。1-2『建築雑誌』での懇談会―なにを規格化の対象とするか1949年(昭和24年)に工業標準化法が施行され、商品標準化委員会はその機能を失い、事務用家具の商品標準も自然消滅することになった。そして17