ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

JISの制定がはじまるわけだが、先述のとおり、商品標準が順次決定されていた最中より、国家規格の制定が求められていた。例えば、1946年(昭和21年)の『建築雑誌』上の企画で「家具に関する懇談会―規格を作る為の前提として―」8が開催された。この懇談会には建築、教育関係者、特許標準局員、そして戦前に型而工房を主催した藏田周忠、工芸指導所の齋藤信治、豊口克平らが参加した。『建築雑誌』で懇談会が開催された経緯は、「本会(日本建築学会)は予てから当局の委嘱で建築関係の規格原案を作成して来たが、今回更に家具調度類の規格化を図ることとなって、その原案の作成を委託された」と説明されている。この説明には、家具は「建築とは全く不可分のもので、家具によって、始めて建築の機能が充分に発揮される」という考えが背景にある。規格制定の目的は「労務、資材、各般に亘ってそこらを合理化し、大量生産に乗せて、安く良い物をつくる」ことであり、このように規格化された家具によって始めて「家が活きて来る」という。ただし、規格の決定には、「個人の生活面」からだけではなく、これからの「国民生活用具」を決め、「文化的水準の向上」をはかるということを念頭に、「生活の様式」あるいは「経済生活」という問題にまで掘り下げる必要があると強調されている。懇談会の全体的な内容は、これらの問題を前提に、規格の内容を具体的に考えるというよりは、なにを考慮して規格を決めていくべきか、そしてなにを規格化の対象とするのかを確認し合う内容になっている。懇談会で持ち上がった規格作成の際に考慮すべきテーマとしてあげられたのは、「今後の国民生活様式について」(おもに「椅子式」への移行について)、「生活経済への影響について」(おもに「スペース」の問題について)、「エネルギー経済と生理的問題について」(「作業能率」について)、「造形の問題」、「品種及び種別の標準と技術的方面」(規格化の対象となる家具の種類、資材や工作機械など規格が影響する範囲について)であった。これらのテーマをつらぬいていた問題はおもに二点あり、一点目は、椅子を中心とする生活様式をどのように確立し、いかに合理的な生活を実現するかという、使用面の問題であった。そして二点目は、まだ技術の高くない「家具の一般メーカー」、「家具製作所」での大量生産システムを構築するという生産面の問題であった。つまり、規格に求められた意味は、使用と生産の面からの合理化をめざし、どちらへもの指導的な意味であった。この懇談会では住居用の家具を中心に話が進められていたが、事務用家具の規格化の緊要さも強調された。それは、需要の大きさということからと、商品標準が決められたにもかかわらず実際には商品標準に即した事務用家具が普及していないという現状からであった。懇談会の内容で一つ注目すべきことは、あくまで「規格」制定の必要が言われていたことである。豊口克平が途中で「標準家具と規格家具」を区別する発言をしているように、標準化と国家規格の制定は同義ではない。standardは、日本語では標準とも規格とも訳され、戦後の工業標準化法では、実質的に標準と規格の間に明確な区別がなされていない。しかしながら、戦前には、両者が厳密に区別される場合もあった9。この懇談会でも、規格は材料や部18