ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2013

写真3写真4のような力を感じるのが不思議である。二つ目は、プラネタリウムのテント状の作品。(写真3)この作品は二人の学生の共同作業で、二人は7月7日の夜空が晴れて星が見えた記憶がなかったというので、調べたそうだ。この時期は、ちょうど梅雨前線が本州のあたりに停滞するため、東京や大阪では、10年のうち1回か2回しか、七夕の星空を楽しめなかったそうである。(たまたま今回は晴れであった)そのため、「七夕に星空を」というのがコンセプトで、すごくストレートで分かりやすい作品になったと思う。実際に中に入り、身体の星の光が満る感覚は七夕の日にこそ味わいたいものだと感じる。これが本当の星ならば完璧なのだろうが、限られた場所とスキルの範囲内では、今できることの最善といえよう。三つ目は星はガスで出来ている性質で宇宙感をオマージュしている平面作品。(写真4)一つひとつの細かい点描画によるオーソドックスな表現だが、これこそテーマに即した表現はないのではないだろうか?川俣ゼミは広告の考え方ベースの研究が常に行われているが、宇宙のシズル感として、点描画で答えるということが“テーマに即した表現力を活用した”という点で、とても腑に落ちる解答といえる。四つ目は、筆者も現在“光”と“写真”、それによる表現の可能性を研究し、その知識や道具の貸し出しなどで学生に還元しているが、その一つの手法、“宙玉レンズ”を使用した作品。(写真5)その名の通り“宇宙”を意識したファンタジーの作品で、宙玉レンズの作り方も指導した。このレンズを通して少女と宇宙が繋がっている。この表現は写真合成ソフトでの演出もあるのだが、三次元の奥行き効果が適切ではなく、一枚もレイヤー内での均一なボカシとして検出してしまうため、自然な球体としての光をとりこんだ状況をつくりあげるには、プロレベルの光の奥行きの理解が必要なのと、その目指す先は結局“偽”の世界を追求するという本質でない方向に向かってしまう。また、作品の写真にあるようにところどころ目的の被写体以外の箇所で意図していなかった光が入り込む偶然性もあり、CGでは産まれない、ドキュメンタリーの絵の要素“絵としての魅力”も加わった。現在の世の中に煩雑している絵は合成が多く、その気持ち悪さや心地悪さは、消費者も見抜いているのだ。少なくとも“教育”の場面では、その場しのぎの絵を指導するべきではなく、さまざまな方法を理解してもらった上で、表現の可能性を知り、どの表現を選択していくかが将来絵づくりにおける“ディレクション能力”に比例するため、授業やこういう機会に広く伝達している。これらのように、本質を理解した上での“表現定着”まで到達した成果は大きい。今後の課題はリサーチの深さになってくるわけだが、“進むべき方向性”は間違っていないと言えるだろう。また、現在写真表現で機材の制約により(スタジオの存在が無いことと、光量の確保)表現力がままならないところがある。学生が“やりたい表現力”のリクエス26