ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

図I-1.『カッコウの巣』図I-2.『カッコウの巣』フォード「バイナトーン・ギャラクシー」(「オープンスペース2014」ICC、2014年)[図K:筆者撮影]。複数のカセットプレーヤーが、テープの収録音を消去した上で、同時に作動させられる。通常時の利用では聴取されるメッセージやコンテンツが消し去られた結果、主にモーターの回転によって生み出される、メディア機器の操作音が交錯する響きを、観客は初めて耳にする。同じように既製品としてのメディア機器を用いながら、一度だけ複製・再現可能な音へ耳を誘うのが八木良太「Vinyl」(「堂島リバービエンナーレ2013」堂島リバーフォーラム、2013年)[図L:筆者撮影]。音を複製・記録し再生するための既存のレコード・プレーヤーを用いつつ、レコード盤の素材だけを氷へ変えて再生する。氷でできた繊細な盤は、周囲の気温に左右され、すぐに溶け始めてしまう。そのために再生できるのはおよそ一度だけに限定され、その響きをくり返し聴取することは適わない。また同じように身近なメディアを用いながら、聴覚だけでなく触覚も誘おうとするのが藤本由紀夫「TURN OVER」(「phono/graph展」ggg gallery、2014年)[図M:筆者撮影]。展示台の上に、通常の冊子本の形式を踏襲しつつ、ページ上の活字は消し去られ、多様な質の白紙を束ねた、かなり大きめのサイズの書物が置かれている。さまざまな厚みや堅さの紙を、いつもよりも大きな動作でめくる度に、通常の読書時には意識が通過してしまう、さまざまな紙の触感を得ながら、その都度異なる響きを耳にする。・注4 :拙論「小説のフィールドワーク―村上春樹を歩く: 2006-2010」(桑沢デザイン研究所『研究レポート』38号、2011年)ならびに「創造過程の概念くずし―メディア文化研究・ゼミ活動報告2008」(同上、36号、2009年)を参照。・注5 :メディア文化研究ゼミ「じぶりく(ジブリ・リクリエイション・プロジェクト)」(桑沢デザイン研究所、2014年)を参照。・注6 :同時進行している三つの研究プロジェクトは、講義や演習の際に、口頭報告やレポートの提出を通じて、共に研究を進めてくれる受講者によって支えられている。下記に講義・演習の科目名を記すことで、改めて受講者へ感謝の意を表したい。桑沢デザイン研究所総合デザイン科(昼間部)「メディア文化研究」「メディア論」、桑沢デザイン研究所デザイン専攻科(夜間部)「空間デザイン論」「デザイン概論」、関東学院大学経済学部「メディアと文化[メディアと芸術]」、会津大学短期大学部産業情報学科「メディア論」、東京理科大学大学院イノベーション研究科「コンテンツ・メディア論」「メディア未来学」、首都大学東京都市教養学部「社会学特殊講義」。10