ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

「純粋行為」とファインアートこれは、本研究所での基礎造形教育の幾つかの課題に見ることができる。執筆者の興味ある研究対象として「純粋行為」があるが、本来ファインアートは、デザインと異なり、内なる発動に揺り動かされて表現となっていくと考えられる。「芸術はわれわれが用意した寝床に身を横たえに来たりはしない。芸術はその名を口にしたとたん逃げ去ってしまうもので、匿名であることを好む。芸術の最良の瞬間は、その名を忘れたときである」このジャン・デュビュッフェの言葉が、アールブリュットの定義ととらえられる。本来デザインも最終的には匿名性が商品を際立たせる筈であるが、今の多くのデザインが詭弁にデザイナー本人を語ることも多い。アールブリュットの制作者たちは様々な社会的な操作や適応システムから自由であるということは、いわゆる精神病院と呼ばれる病院の患者、孤独に生きる者、社会不適応者、受刑者等多様な「アウトサイダー」たちといえる。これらの人々は、作品の発表を考えず、あるいは度外視して、孤独の中、独学で創作活動を続ける。世の中の様々な美術様式や歴史、アートを通しての社会的人間関係に無知あるいは無関心であることが、逆に解放された創造性をつくり出し、究極を感ずる作品を生み出す要因になっているのではないだろうか。ジャン・デュビュッフェは「アールブリュット」の提唱者だけでなく、アールブリュットコレクターの草分けでもある。1971年には彼のコレクション3000点以上をローザンヌ市に寄贈し、1979年に初のアールブリュット専門の収蔵館が創設された。現在収蔵作品は35,000点以上にのぼり世界中から年間45,000人の観覧者が訪れている。それほどアウトサイダーアートには引きつけられる魅力がある。ただ、アウトサイダーアーティストのカテゴリーに括る範囲は難しく。正規の美術教育を受けていたり、社会生活の中に普通に組み込まれているいわゆる「インサイダー」の人々の中にも作品としてアールブリュットを感じるものも多い。前述の身体的・知的障害を持つ人々に対しては社会の中に授産施設、養護施設、障害者支援等公私含めて多様な受け入れ体制が出来つつあり(それでもまだまだ不足している)創作やそれによる自立支援も充分とは言えないが続けられている。しかし、社会の中で一見健常者にしか見えず、健常者として扱われ、本人の身の置き場を失っている気分障害等を持つものも多い。そして、そういう人々の中に多くの美術、音楽、文学、発明発見等を残した人々がかなりの割合で存在している。鬱病、パニック障害、パーソナル障害等何らかの精神疾患といわれるいわゆる気分障害であったろうと言われる人物は、ごく一部をとりあげるとカート・コバーン(米・ミュージシャン)/ウインストン・チャーチル(英・政治家)/エブラハム・リンカーン(米・大統領)/チャイコフスキー(露・作曲家)/シューマン(独・作曲家)/宮沢賢治(童話作家)/三島由紀夫(小説家)/夏目漱石(小説家)/北杜夫(作家)/中島らも(作家)/萩原流行(俳優)/高島忠夫(俳優)/足利尊氏(武将)/太宰治(小19