ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

特に気分障害者はその症状をはっきりと自覚しなかったり、自分に診断された病名を他の病気以上に認めたがらない。しかし、これは他の病もそうだが、自分の病名を正確に知り、認めることが安定した治療や自身の生活のベースになる。病名をきちんと認めれば、あとはそこに寄り添う何らかの方法を見つけやすくなると思う。ゴッホは癲癇質であったという病跡学的な報告があるが、その癲癇質の執着気質から来る絵画的な特徴として「ひまわり」という一定のモチーフへの愛着があったとされる。病者が持つ独特の性格・行動傾向や特殊な体験は病者自身の中に秘められた才能に掛かると見事な作品へと変化する。我々の協会は働きたくても働くことの出来ない、あるいは働く・動く気力さえ失ってしまうことの多いこの病者の就労支援をするつもりはないし、難しいことだ。彼らが動き始めるモチベーションとなるはずの内なる能力や才能を見つけ引き出すことが重要課題である。特に「芸術支援協会」と唱ったのも、気分障害等の病者の多くに「表現」という能力とそれに伴う行動エネルギーが隠されていると信じているからである。逸脱した表現能力を持つ人々の特徴を研究すると●常識で判断せず、一般常識を常に疑った目で見る。●最後までやろうとする信念あるいは執拗さ。●感性や感受性が鋭すぎるため、気分障害や神経症等の発症気質がある。●物事の思考視点が世界、宇宙視点である。(俯瞰する)また自分を軸とした物の見方をしない(自己の存在が薄い)●一般と幸福の価値観が全く違う。●自分を含め、人間がとても小さい存在であることを強く理解している。●自分の生きる役割を認識し、ある意味では強迫観念に支配されている。●尋常ではない集中力をみせる。●正常と異常の境界線、つまりパラノイア境界を知っている等しかし、多くの才能ある人々がこの境界線に立ち続けて表現をしていくことは難しく発病してしまうことが多い。彼らにその疾患を明確に実感・認知してもらうことで、もう一度彼らの豊かな表現能力を花開かせることが可能だと考えている。心理学者の小山高正氏によると、多くの病気は遺伝と環境の複雑な相互関係の上に成り立つと言い、これは精神疾患には更に大きな要因となってくる。気分・精神障害は病気かという議論の中で「近年、精神医学の分野は甚大な変容を経験した。研究の焦点が心から脳に移り(例えば総合失調症及び双極性障害は脳の扁桃体と海馬等の縮小が見られる)・・・同時に、職業も非適応的な心理プロセスに基づく精神異常のモデルから、医学的な疾病に基づくものへと変化した」「創造性でいえば、有名なアイオア作家クラブのメンバーの80%は、何らかの気分障害を経験したことがあり、分裂病患者の子供たちの20%が音楽に並外れた能力を示している」と言う。「確かに気分障害や分裂病は人生を破壊しうる病である。しかし極めて創造的でクリエイティブな分野で成功する者も多い。分裂病と双極性障害は人間の最高の状況と最悪の状況を合わせ持っているように思われる。最悪の状況を緩和する方法が解れば、気分障害・精神疾患者は世界を豊かにする為に多大な貢献をすることが出来るだろう」(英国分裂病協会顧問ディヴィット・ホロビン)最高の状況を見極め疾病者からそれを引き出す方法を研究することも協会の責務のひとつかもしれない。人間の脳「精神」の光と闇はそれぞれが単一に独立して存在しておらず、ひとつの働きの二面性である。それは「陰陽の働き」いえるだろう。それはどちらも必要であり、どちらかが優れた存在というものではなく、相反する2つの性質が合わさって全体として一つの作用になる。特にクリエイティブな仕事と精神疾患は背中24