ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

メディア利用の探究―三つのプロジェクトの目的と概要―御手洗陽|デザイン学担当Akira Mitarai1.本稿では「メディア利用の探究」をテーマにした、三つの研究プロジェクトの目的と概要について報告する。いずれも制作者と受容者を共に含む「メディア利用者の創造性を高める」ための環境の創造の一環として、美的な制作物・製作物とより深く関わり、創造性に眼を留め、評価することを目的に取り組んでいる。第一の研究プロジェクトは、講義の場において受講者と共に取り組んでいるもので、「映画の観察」と名づけられた課題を通じて、創造的な「メディアの利用法」を認識・評価できるようになることを目指している。これは映画の作品世界に内在しながら、メディアやモノがメディアとして、いったいどのように利用されているのかを「観察」するもので、過去にも一部報告を行ってきたが[注1]、今回は音響に関わるメディア・モノ利用を中心に、受講者による報告やレポートから得られた知見をとりあげる。また第二の取り組みは、企画の関係者への聴き取りを含めた、展示空間へ直接足を運んでの見学調査で、メディアの通常時の利用とは異なる「実験的利用」に関する、「制作者」の問題意識のあり方を理解・共有することを目指している。自明化した形態とは異なるメディアの利用を試みるアートやデザインの取り組みから、今回は本文ではなく補足の註釈において、主に音や響きを利用した事例を中心にとりあげるが、ここでは音を通じて何を実現しようとしているのかに留意して整理する[注2]。さらに第三に昨年度から、演習の場で取り組んでいる取り組みとして、アニメーション映画を素材にした、メディアの「受容経験」をふり返る実習がある。スタジオジブリの宮崎駿監督による作品を対象に、作品について記憶していることをすべて記述した上で、実際の映像と比べるという課題「記憶レポート&スケッチ」に取り組み、観客としての観方、特に受容時の無意識的な編集や改編のあり方を解明・自覚することを目指している。ここでも音の働きにも注目しながら、一年目の研究成果として得られた知見を整理する。メディアの利用法、制作者の問題意識、受容者としての観方を明らかにする取り組みは、形式的には講義、調査、演習という、それぞれ異なる場で実践されているために、相互の関係が一見捉えにくい。ひとつの取り組みから得られる知見が、他の取り組みに影響を与えながら進展するため、本稿では互いの関わり合いを全体として視野に入れながら、「メディア利用者の創造性」を高めるための探究について、現時点における研究活動の成果が、少しでも見通せるようにまとめたい。2.まず第一の研究プロジェクトで取り組んでいる課題「映画の観察」の中から、講義の受講者によって2