ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2014

図G-1.『じぶりく。』表紙図G-2.『じぶりく。』目次図H.記憶レポート・板書かりにした「受容経験」の解明へ進むことになった。そして現在、次第に明らかになりつつあるのは、受容のプロセスにおいてみられる「リクリエイション」である。改めて意識的に解釈を構築するよりも早く、半ば無意識のままに、いわば脳内での編集や改編が生じており、ただ観るだけでもじつはすでに再創造・再改造は始まっている。7.第三のプロジェクトとして、昨年から演習の場で取り組んでいるのは、スタジオジブリ制作の宮崎駿監督による作品を対象にした、メディアの「受容経験」をふり返る実習である。参加者は作品について記憶していることをすべて記述した上で、実際の映像と比べるという課題「記憶レポート&スケッチ」を通じオーディエンス(観客)としての私は、いったいジブリ作品の何を観てきたのか、解明をおこなう。より詳しい作業の手順は昨年度末にゼミ参加者とまとめた冊子に記したので、ここでは要約して紹介する[注5][図G-1・G-2]。まず本格的に課題に取り組む後期へ向けて、前期中はスタジオジブリ制作の映画に関する情報を予め遮断するように心がける。次に後期に入ると、担当講師はあらすじやポイント、シーンなど、覚えていることを書く・描くという大まかな指示だけをおこない、その日に書き出すべき作品のタイトルを告げる[図H]。それを受けて参加者は文字による書き出しとイメージのスケッチをおこなう。このときに演習の場にみんなで集まり作業を進めるが、他の参加者が共に書き描く効果は予想以上に高く、物語の最後までたどり着こうとして、一時限分では描き終わらないこともある。仕上げられたレポートは講師によってその日のうちにスキャンされ、電子ファイルとしてサイトにアップロードされ、参加者が互いのレポートを見比べられるようになる。次の回には、前回にとりあげた作品を上映し、参加者全員で観察しながら、メモをとる。最後まで見終わった後で、今回実際に観た映像と、前回自分が思い出しながら書き出す・描き出すことができたこととを比較し、その通りだったこと(共通点)と違っていること(相違点)を明らかにする。このような作業を複数の作品毎にくり返し、作成したレポートをデータとして蓄積した上で、最後に自分自身が観客としてジブリ作品といったいどのように関わってきたのか、思い出せるくらい意識して観ていたことは何か、思い出せないのはどんなことであったか、またその理由が考えられるとしたらどんなことか等、観客としての特徴や傾向を明らかにするような、受容経験についての考察をおこなう。8.このような作業を通じて、一年目に明らかになったのは、第一に同じ作品を観ているはずなのに、書7