ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

視覚伝達デザイン基礎の定義の再考辻原賢一|ビジュアルデザイン担当Kenichi Tsujihara「視覚伝達」の基礎とは何を指すか?現在の世の中、全ての人が所有していると言っても過言ではないスマホやPCノート等によるアプリの進化により、デザインの教育を受けていない人でも、それなりのデザインは出来てしまう。それは、グラフィックの業界でもあきらかで、イラストレーターやカメラマンなど「表現系」の職種は特に、ソフトの進化による定着のクオリティの高さの進歩に伴い、依頼仕事の減少が顕著である。つまり、デザイン教育を受け、実践を重ねてきたプロフェッショナルと、デザイン教育を受けていないアマチュアとの差が“クオリティ”という一側面から見れば差が縮まってきているのは周知されており、今後はさらに無くなっていくことだろう。その状況に屈することなく、アマチュアと圧倒的な“差”を産み出すことが、現時点のやるべきことのプライオリティの上位にくることは間違いない。事情を項目別に大まかに分解すると、「企画・アイデア」「相手を魅了する表現力」「視覚伝達デザインとしての定着力」になるが、今回のレポートの視点は、「視覚伝達デザインとしての定着力」に注視する。また、このレポートがデザイン教育を受けていない人にも一つの意見として読んでもらいたいこともあるので、普遍的内容も含めて記しておきたい。それを踏まえて一般的に誤解を受けやすいのが、「デザイン定着のクオリティ」は、人の受けとめられ方の違いや、見る人の感性の違い、またはセンス等で、明快な答えや判断材料の基準になる“単位”のようなものは無いというイメージが世の中では浸透しているように思う。確かに、そういった側面があるにはあるが、「デザイン定着のクオリティ」にハッキリした差を出せる部分がある。それは、「伝える情報を一つに磨き上げ、着実にビジュアルで定着しているデザイン」(※以下< A >とする)ということ。言葉にすると本当にあたりまえ過ぎて驚くが、これがなかなか出来ない人がとても多い。それはセンスの範疇ではない。授業の中でも、授業開始初期の学生のアイデアスケッチや試作から、今回のテーマ< A >をキチンと教育した結果に劇的な違いを感じる。特にここ数年の学生の定着の傾向を顧みると、一つの誌面に複数の情報を詰め込んでしまい、結果何一つ伝わらないケースが実に多い。ありとあらゆる情報がちらばっている現在の状況が、このように“人を通してもシンクロしている”のである。日本デザインセンターの川俣忠久先生も、世の中の起こった事象を「可視化」できる能力を携えた者こそグラフィックデザイナーとして、生き残れると断言している。さらに言えば、「楽しく可視化」や「感動的に可視化」という付加価値も必要になる訳だが、32