ブックタイトル桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

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桑沢デザイン研究所教員研修会研究レポート2015

ペリアン・チェアの魅力をさぐるー1枚の板を折り曲げた究極の美しさー藤原俊樹|スペースデザイン担当Toshiki Fujiwaraペリアン・チェアは私の最も好きな椅子のひとつである。1枚のブナ材に切れ込みを入れて折り曲げただけのシンプルな形態。背もたれが200ミリ程度の高さのため、脚が長く見えてスマートである。成形合板の柔らかい曲線が優雅で美しい。フランスのデザイナー、Charlotte Perriand(シャルロット・ペリアン)女史によって1955年にデザインされた。ペリアンは戦前に世界的建築家:ル・コルビュジェの事務所に入り、1940年に輸出工芸指導顧問として商工省の招きで初来日した。日本各地の工業・工芸産地を視察して歩き、日本の伝統技能や民芸に影響を受け、それらを活かした作品を残した。コルビュジェの事務所で同僚だった建築家の前川國男や坂倉準三、デザイナーの柳宗理などとの交流でも知られ、戦前・戦後を通して、日本のデザインに与えた影響は大きい。1953年、再来日したペリアンは55年に開催された『ル・コルビュジェレジェペリアン三人展』において「オンブル(影)」と名づけられたスタッキング・チェアを発表する。機能美とデザインを兼ね備えた世界初のスタッキング・チェアは、日本の文楽の黒子から発想され、折り紙のイメージで折り重なっているのが特徴である。これが通称「ペリアン・チェア」と呼ばれるようになった。発表当時、量産できる技術がなく構造的にも問題だった。74年に天童木工が、その高度な成形合板の技術と職人芸において製品化する。(オリジナルは10ミリであったが強度の問題から厚さ17ミリにされた)。日本の技術の底力を引き出したシンプルで美しいペリアン・チェアの魅力はどこにあるのだろうか。復刻された現物の観察やトレース作業を通して、そのフォルムやディテールを解析する。2