ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

38感動の仕組みを理解する 結果として感動を得たとしても、クリエイターとしては、偶然ではなく必然性が必要になる。クリエイターとは、かなりエンターティナーに近い要素がある。エンターティナーは観客の感動の要因を分析して論理化し、具体的な対策を研究していく。この図式はクリエイターの心得と全く変わらない。観客(ビジュアル作品を見る人)がいる以上、その人がどのビジュアルを見せれば感動するのか?それを知らなくてはならない。また踏み込むと、どんな状況や関係性で見せれば感動されるのかを知っておく必要がある。例えば、商品広告でキャンペーン広告展開の場合、「CM」「ビルボード」「駅ばりポスター」「車内吊り広告」「雑誌広告」「グッズ」「商品パッケージ」などが同じビジュアル記号で作成され、世に浸透していく時、媒体は違えど同じビジュアルであるにも関わらず、感動する感覚には差がでる。世界観のあるイメージ的なビジュアルはチラシやポスター的な媒体で見せられる方が感動のスイッチが入りやすいし、かわいいキャラクターがビジュアルに入り込んだケースは、グッズやパッケージが感動のスイッチが入りやすいのは想像つくだろう。よって媒体の違いでも感動の所在が分類されるし、掲載する時系列の順序だけでも感動のコントロールは可能である。これは好きな人にプレゼントする行為にも似ていると考えると理解しやすい。なので、学生にはポスターが「何処に掲載されると最も効果的か」「どんなシチュエーションで?」「何枚連続で貼られるといいのか?」「他にどんな媒体があるのがさらに効果的か?」までリアルに考えてもらっている。初めて見る人間の気持ちになれるか?そしてそれを具体的に演出できるかが、「感動の仕組みを理解する」勉強につながる。前項で“ よりよいイメージの獲得” の理解を経てその上で豊かな表現を作品に纏わせる実力が備わり、さらにどの状況と、空間と、タイミングで見せるかを正しく把握できたら、かなりの確立で“ ビジュアル作品での感動の操作” が出来る能力の獲得したことになる。このことを踏まえて、本当の意味で“ 人に届くまでが作品制作” だと理解できたら、理想的な教育が行われた状態だといえよう。また、この経験を一度でも体験出来た学生は、他に優れなかった作品があったとしても、この図式の理解のを応用していくことでリカバリーできることになる。この体験があるなしでは、その人の成長できるかできないかの分岐になるため教育としては重要なポイントといえよう。次にこれらの条件を備えた作品を紹介する。理解された作品事例と検証 これまでの理論が正しい方向にキチンと導いていけているかを学生作品での実例で検証していきたい。イメージビジュアルの代表として“ ファッション” がある。一つの世界観をビジュアルで表現するのに特化したモチーフだ。逆に家電や薬品などの