ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

4fig-6_ 草彅家住宅(秋田県仙北市)fig-7_ 曲屋の例(赤い矢印部分が玄関) fig-8_ 中門造の分布エリア現存する旧奈良家住宅では、上手側にも玄関が付いているが、これは後世に付けられたようである。 秋田県仙北市で見学した草彅家住宅(fig-6)は平面形がL 型をしており、「曲屋(まがりや)」と呼ばれるものである。曲屋は、基本的に直屋状の主屋に馬屋と土間がL の字状を成して付随することが特徴で、主屋と付随部分の規模の差が少ないことや主屋と付随部分では明快に空間の機能が別れることが中門造との違いである。また中門造との重要な違いは、玄関の位置で、中門造は入口が突出部の正面につき、突出部がいかにも門のような役割を果たす。それに対して、曲屋の入口は、L 字の入隅付近(凹んだ部分)に付くことが挙げられる(fig-7)。 中門造と比べ、外見上、曲屋の方が単純な形をしているように思えるが、中門造は17 世紀の中頃に成立し、曲屋よりも成立時期は古い。中門造は、特異な平面形をしているように見えるが、江戸時代を通して徐々に広がり、最終的な分布地域は、秋田県、山形県のほぼ全域から福島県の北西部まで広がり、一つの形式が占める範囲としては極めて広い(fig-8)。 18 世紀末から19 世紀初頭には長野県の秋山地方の上層農家でも、この中門造が採用されている。空間的配列の特性 旧奈良家住宅の平面図を見ながら、もう少し詳しく中門造の特徴を見ていくことにする。上でも述べたように、中門造は、曲屋と違い、主屋とそこからの突出部の境目では明快に機能が分かれていない。そして、分かれていないことで、突出部の空間の性格が主屋に侵食し、土間という外部的性格の空間が、直屋や曲屋以上に、室内空間に影響を与えている。具体的には、内部空間において、土間空間と一段上がった座敷や板張りの室内空間がL 字状に接し(fig-9,10)、直屋や曲屋以上に、様々な部屋が直接的に土間空間に接することとなる。そうして、旧奈良家住宅では、土間の周りに、「おえい」(fig-11)や「いなべや」(fig-12)、「からうす場」(fig-13)