ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

61掛けていたジャケットを着て退室し始めるが、最初に無罪を主張した男性が、部屋に独り残された彼にそっとジャケットを着せてあげる[図H,I]。それは最終的には彼も正義を実現する市民であろうとしてくれたこと、そのために余儀なくされた苦労をねぎらい街へ戻してあげようとしてなされた行為だと理解できる。(2)野原家と、家族を連帯させる高級焼肉。~「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」:焼肉 いろいろなクラスで、食事という出来事とそれを可能にする食べモノが、共に食べるという関係性を実現することに関心を向けた報告が現れるようになった。この作品でも食事を共にするということに焦点を当てることで、家族が不条理にも巻き込まれたトラブルを越えて、一体化する様子が見てとれる。 ある日、朝ご飯があまりに粗食であることに怒りを覚えたしんのすけ・父・妹・犬が、母のみさえへ抗議する。するとみさえは怒りを覚えるのはわかっていると頷き、しかし夕食として用意されているのは、ふだん滅多に食べることができない焼肉であることを宣言する。実際に肉を目の当たりにして、しんのすけ・妹・犬・父は、母が日々の家計をやりくりして、ようやく手に入れた高級焼肉であること、ただ夕刻まで我慢をすれば家族全員が味わうこと図I.「十二人の怒れる男」着せてもらうジャケット2ができることを理解し、その瞬間を朝から心待ちにする[図J]。 焼肉という食べモノをいっしょに味わうという目標に向けて、野原家はさまざまな困難を乗り越えていく。突然、見知らぬ白衣の男性が助けを求めて乱入し、これも見知らぬ集団が彼を連れ戻しに現れる。そしてなぜか秘密を知っていると勝手に思い込まれて野原家のメンバーは捕らえられそうになる。そこから逃げ切ると次はテレビを介して指名手配されてしまい、今度は街の人びとに捕らえられそうになるなど、野原家の人びとはバラバラになりながらも敵の本拠地である熱海へ向かう。そこで彼らは再び集結し、一体となって戦うが、それを可能にしているのは、再び自宅のある春日部へ無事帰還できれば、共に焼いて食べられるはずの焼肉への熱い思いである。 報告を聴いたクラスからのコメントとしては、焼肉が原動力となり、食べたいという単純な理由で、野原家の絆が深まることを理解した、ギャグアニメ映画を選ぶことで焼肉によりストーリーが構築できるとわかって驚いた、野原家が結集したときに合い言葉をいうシーンも家族のつながりをよく示していた、まったく知らない人のために人物説明があってもよかった、おなかがすいたなどの声があった。図J.「クレヨンしんちゃん」野原家を歓喜させる高級焼肉