ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.44 2016

64として意味づけていたこと、パスポートのほうに報告の重心が置かれていたが、下水道などについてもどのような使われ方をしているか、よりふみこんだ分析があるとなおよかったなどの声があった。5. キャラクターによる媒介(1)アナと姉の、幼少期にいっしょにつくった雪だるま。~「アナと雪の女王」:雪だるま この作品では主人公の姉妹が幼少期にいっしょにつくった雪だるまがいったん離ればなれになった二人のあいだをつなぐように働く様子が観察された。 国王の娘である姉エルサは降雪と凍結の魔法を生まれながら身につけていたが、幼少期は未だ弱かった魔法の力が次第に強くなり、ついに国全体を凍結させてしまう。しかし最後には自分で制御して、夏に広場だけに降らせて、国民を楽しませることができるようになる。 この間、姉妹の関係も大きく変容するが、雪だるまはこのプロセスに深く関わる。オラフと名づけられた雪だるまは、魔法のあまりの威力で危険視され、城にいられなくなった姉が向かった先へ、妹アナを案内する役割を担う。<夏= 妹>と<冬= 姉>の共存を理想に掲げ、凍死寸前の妹を助け、愛とは何かを説く。 このような雪だるまの活躍は、自らにかたちが与えられたときに、姉によって自分に吹き込まれたことば= メッセージを、最終的に実現することに向けられている。雪だるまは幼少期に妹にせがまれた姉が城の中に魔法で降らせた雪によってつくられたもので、このとき姉はその雪だるまをオラフと名づけ、声色を使い、妹に向けて「ぎゅーっと抱きしめて」と言わせている[図N]。 作品ではこのメッセージが最後にようやく届き、雪だるまに導かれた妹が姉をようやく抱きしめることで、姉は魔法の力を制御できるようになり、国中の氷結が溶解して国民が救われ、凍死寸前だった妹自身の命もまた救われ、真実の愛が歌われる。そして雪だるまは最後に姉から報酬として、夏でも溶けないように、自分専用の頭上の雪雲を授けられる。 報告を聴いたクラスからのコメントとしては、メディアとしてキャラクターと思われるモノ(人物?生物?)を選択した点がユニークである、幼少期に姉妹がつくった雪だるまがその後の姉妹の思いを担い関係を生み出すディアとして重要な働きをしていることを理解した、夏と冬の共存を希望することが姉と妹の共存を望むことだと解した点が説得的といった声があった。(2)少年と他の子どもの、憧れと嫉妬を生む赤い風船。~「赤い風船」:風船+ひも この作品の報告では赤い風船というキャラクターを介して生まれる主人公の少年と他の子どもたちとの関係に加えて、風船に付けられているヒモの用い図N.「アナと雪の女王」姉妹がつくった雪だるま