ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

「視点からみる現在の考察」辻原賢一|ビジュアルデザイン担当Kenichi Tsujihara時代に合わせたビジュアルの変化とは時代により多種多様の媒体が増え続けている現在。ビジュアルは時代に合わせて、どのように変化していっているのか?このことに意識を向けることは、今のビジュアルデザインの傾向をわかりやすく説明するにあたって普遍の考えであるものとは別に、新たな視点として考えを構築していく必要がある。時代のよって刻々と変化していくビジュアルの性質を「流行」や「センス」という視点や切り口というだけで片付けるのはかなり乱暴である。具体的な説明をしていく為には、ビジュアルを一つの視点で言語化していくことこそ、絵を理解する上で、お互いに歩み寄る手段でもあるからだ。以上の理由で今回のテーマの一つ目に、“アングルによるビジュアルの視点”に注目してみることにする。“アングル”だけで今を語れるのか?という疑問は以下を読んでもらいたい。今世の中の様々な媒体に溢れているビジュアルをカテゴライズすると、かなり大雑把に言えば二つある。一つ目は商品の使い方や内容、いかに便利かを説明する「説明的ビジュアル」。二つ目は見る人に夢や希望を抱かせる「イメージビジュアル」。この二つに分けられる。通勤通学中の電車の車内吊りに目を移しても、大きく言えば上記の二つに分けられているのが日常と言える。このことを踏まえてどちらが多いかと言えば、資本主義社会の中で、しかも景気の悪い日本の状況下の中では、余裕のあった時代と比較しても「説明的ビジュアル」でほとんどが埋め尽くされているのは周知の事実である。それがいいかどうかは情報の送り手か受け手かの立場によって違いがでる。なかなか人は客観的立場に慣れないことはいつの時代も変わらないものである。このような事実がある現状だが、ビジュアルの勉強を取り組む場合には、「イメージビジュアル」の練習を重ねた方がよい。なぜなら、説明的ビジュアルは「言葉が先攻する」ことを意味しており、その「言葉」を際立たせるため別の言葉が積層しレイヤーの構造になっている。喩えて言えば、看板だらけの街並みのように、「結果どれも目立っていない」情報が当たり前のようにそこにあるのである。情報を整理し、優先順位をつけ、一番伝えたい情報を人に印象に残るように比喩などの技術を駆使し、インパクトを持たせるという「本来の構造」ができていない「説明的ビジュアル」は、どの要素も主役扱いをしていない。あるいは、言葉同様の絵を説明的に添える手法もある。これは不安の表れで、絵の良し悪しはあまり問われていない。人の心を動かすという発想は皆無で、文字通り「説明できていればOK」なのである。それに比べて「イメージビジュアル」は表面上の「言葉」では伝達しない、あくまで「絵」を通して情報発信者と受信者をイメージで繋ぎ、感情を動かすの18