ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

作品A作品B滲ませることで置き換えが可能になったことを考えると「手書き文字」の世の中の浸透は比較的に遅く感じられるものだが、ここにきて商品でも手書き文字が多く見られるようになってきた。なぜ浸透がここまで遅れたのかは、いくつか理由が挙げられる。一つは、信用の問題。商品においてのネーミング、そしてタイトルロゴは信頼が最も重要であり、その次に魅力な要素や便利な部分など、一つのモノの中にいくつかのレイヤーでプライオリティの情報が含まれている。そのプライオリティの最も高い情報を手書きと言う信頼が良くも悪くもなる手段で定着する行為自体、ハードルが高かったのは想像がつくところだ。ほんの少しのテイストのズレでイメージや信頼が損なわれる手書きであるが、そのハードルを超え、満を持して出てきた商品は、タイトルロゴもセンスがいい。おそらく皆さんの身の回りにも注目して探すと結構増えてきたなと思われるし、なかなか絶妙なバランスでデザインされているなと感じることだろう。また、信頼は情報の受け手が敏感に反応する要素である。そもそも今の世の中、広告、とくにCMの情報はある意味嘘で塗り固められている。タレントが「この商品はいい」と言わされていること。笑顔であること。演技であること。など、作り手も受け手も嘘(虚像)の世界の共通認識であえて作られている。そのことを踏まえて書体は虚像なのか?または、虚像の道具なのか?これはもちろん「どちらにもなり得る」訳で、重要なのは「これまでどのように使われてきたか?の信頼の蓄積」がポイントになってくる。例えば、新聞の社説が信頼できる情報だとしよう。その社説の書体や組み方、そして見え方が蓄積されて信頼を得られる。外見より行動や内容が大事だということがわかる。その行動を証明するものとして、例えば年賀状。素敵なデザインの年賀状はいただくと楽しい気持ちになるものだが、大量に印刷された気配を感じると気持ちが萎えるのは誰しもが経験あるはずだ。そんな中、手書きの年賀状は気持ちがこもっているという点で信頼できる。22