ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

?双極性障害II型:私が医師より双極性障害であることを告げられたのは7年前だった。そして驚いたことに発症は20歳前後だったらしい。青天の霹靂だった。双極性障害の発症年齢の多くは20歳前後だという。それまでの35年以上私は自分が鬱であると思っていた。しかし、過去35年間のエピソードを思い出すと、公共の場で些細なことを理不尽だと思い込み怒嗚り散らして注意したり、高額な衡動買いを続けたり、性的逸脱があったり、急に落ち込み続けたりといくらでも思い当たることが繋がっていった。私の双極性障害II型は軽躁状態のため、周囲からは少しハイだけれど、元気で行動的で、アイデアも次々に出てくる人間に見えていたそうである。この軽躁状態があったからこそ多様なデザインワークや美術館等での多くの個展、発表が実現できたのかもしれない。双極性障害が認知された時、障害や病気とは一体何なのだろうと強く感じた。前レポートでも紹介したように、多くの気分障害を持つクリエーターたちが、そのやるせない苦しさを抱えながら、壮絶な衝動ともいえるようなエネルギーで、小説、絵画、作曲、演奏、彫刻、ダンス、政治、詩、歌唱等々世の中に残せるものを創造している。双極性障害にはもう一つ以下のタイプが見られる。●ラピッドサイクラー(Rapid Cycler/急速交代型):通常、双極性障害の躁鬱の波は緩やかに繰り返される。この気分の波が通常よりも早いサイクルで出現するタイプの双極性障害を「ラピッドサイクラー」という。ラピッドサイクラーは双極性障害の一つの型ではあるが、ただ病相の繰り返しが速いというだけではなく、通常の双極性障害とは異なる特性も持つ。その躁鬱の繰り返しの速さは思考の転換の異常なスビードと正反対に近い創造が入り混じることによる創作がなされることも多い。つまりうつ状態は活動のための休息・充電期間ともいえる。ラピッドサイクラーは最初から医師に認められるケースはあまり多くはない。最初は通常の双極性障害の気分の波であったが、治療中に徐々に躁状態とうつ状態の波の間隔が短くなっていくというケースの方が圧倒的に多い。どんな場合にラピッドサイクラー化するか、その要素は?多大なストレス?抗うつ剤の多量な使用などが指摘されている。気分が上下しやすい強いストレスが続いていると、気分障害はなかなか治らずラピッドサイクラー化してしまうことがある。特にHEE(HighExpressed Emotion)の環境下で過ごしている人間はラピッドサイクラー化しやすいと感じる。HEE(High Expressed Emotion):この周辺の環境とは?批判?敵意?情緒的な巻き込みこのHEEの環境は大なり小なり全ての人間が抱えているものであるが、正常な日常生活を超えた異常なまでの他者からの批判や敵意などがぶつけられた時に、考えられないほどの反発エネルギーが生まれ日常から逸脱した高い感情エネルギーを発して、それが様々な形や方向に表出されることになる。これが魅惑的な文章や、絵画作品、楽曲等に変化していくのではないだろうか。クリエイティブな世界のことで考えれば、双極性障害II型は躁状態がほとんど目立たず、ポジティブで明るい印象を周囲に与えるため人と接することの多いデザイナー、ディレクターなどの仕事に向いている部分がある。ただし行き過ぎた行動が時に相手の顰蹙を買い、信用を失い、多くの知人を無くすことにもなる。事実、私は多くの恵まれた仕事や創作を体験できたのに反して時々見えるエキセントリックな行動や言動により、多くの友人や知人を失っている。これは気分循環性障害(Cyglothymia)に似ており、軽躁エピソード27