ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

デザインされる生活(2)ー「収納」からデザイン史研究の射程を考えるー北田聖子|デザイン学担当Seiko Kitada0.はじめに本研究の主旨は、「収納」と「デザイン」との結節点を見いだすことにより、デザイン史研究の新たな地平を開くことである。つまり、「収納」というテーマをとおし、デザインの対象や行為の変容を明らかにすることである。昨年度の拙レポート「デザインされる生活(1)?「収納」からデザイン史研究の射程を考える?」(『研究レポートNo.44』)では、本研究の第一歩として、特に2000年代以降に刊行された「収納」関連の書籍や雑誌記事をひもとき、現在「収納」がどのように語られているかの一端をみた。今年度も引き続き「収納」に関する資料の収集と整理をおこなっている。昨年度のレポートでは、現在の「収納」の語り方をみるいくつかの視点を示すと同時に、「収納」にまつわる言説がどのような文脈から発現してきたのか、その歴史的な系譜を遡行するかたちで構築することを試みた。その際に今後の方向を指し示すことはできたと考えるが、「収納」というテーマで研究を進めるにあたっての問題点も明らかになった。問題点の一つ目は、「収納」というテーマ論の先行研究がないことである。「収納」については通時的にみても共時的にみてもさまざまな人や領域から語られてきたため、さまざまな分野にまたがって存在する資料を網羅する必要がある。みるべき資料の範囲がまだ定まっていないというのが現状である。二点目は、一点目の問題にも通じるが、資料がさまざまな領域に分散しているため「収納」ということば自体がいつから一般化したかを特定し難いということである。少なくとも、今回のレポートを作成するにあたり用いた資料には「収納」ということばはあらわれていない。現段階では、戦後の1950年代になって「収納」ということばが使われていたということを確認できたにとどまっている。例えば、「収納家具」というように特定の用途を持った家具を指し示す用例を確認した。そのため、今回「収納」というテーマのもとで取り上げた事例は、あくまで現在われわれが「収納」と呼んでいる行為や状態と照らし合わせて、それと類似するものである。その行為や状態を説明する際に使われていることばについては後で述べる。以上の問題点を踏まえながら、本レポートでは特に『住宅』(1916(大正5)年創刊)と『婦人之友』(1908(明治41)年創刊)で明治期末から大正期、つまり1920年代後半までに掲載された記事を中心に取り上げながら、「収納」がどのように語られていたのかをみる。本研究で言うところの「収納」は住宅のそれを想定しているのだが、そもそも住宅のあり方について論じられるようになったのは明治半32