ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

「再創造としての創造─メディア利用の視点からみるデザイン、ジュエリー、ダンスのリ・クリエイション」御手洗陽|デザイン学担当Akira Mitarai1.はじめに私たちの現在において、いったい何を実現・達成すれば、創造をしたことになるのか。そんな大きな問いに向けた探究の小さな一歩として、本稿ではメディア利用の視点から、デザイン、ジュエリー、ダンスにおける、特徴的な取り組みをとりあげる。新たな価値を生み出すために、同時代の制作者はいったいどんな取り組みをしているのだろうか。メディア利用の視点に立てば、既存のジャンルの区分を超えて、創造性をとらえる視野を拡張できる。具体的なメディアが特定の仕方で用いられ、何らかの体験が生み出される。そんなメディア利用を、一般的にいわれる場合の鑑賞者としての利用者と、本来利用者でもあるはずの制作者へと分けずに、併せて考察することもできる。本報告では筆者自身が体験して強く印象に残り、講義や演習で受講者と共有した事例をとりあげる。やや先回りになるが、いずれの取り組みにも共通するのは、それぞれのジャンルのなかで、すでに創造されたものを、自らの手で、自らの仕方で再創造しようとする点である。2.デザインにおける再創造: TAKT PROJECT…「素材と対話するアートとデザイン」展(富山県美術館・2017)デザインの分野で、プロダクトデザイン(工業デザイン)における製品というモノの在り方を問い直そうとするのが、TAKT PROJECTの取り組みである。「3-PRING PRODUCT」(サンプリングプロダクト・2014)では無印良品の既製品を完成品としてではなく、新たな製品の材料として用いる。3Dプリンター製の接合部品を使い、既製品を組み合わせることで、新たに製品を生み出そうとする。収納ケースを複数つなげる、足を付けて家具風にする、吊せるようにして照明のシェードにするなど、音楽制作の手法であるサンプリングのように、既製の「部分」がさまざまな製品の「全体」を構成する[図A-1,2、図B-1,2]。「Dye It Yourself」(2015)は吸水性のプラスチック素材を用いた白色のイスや机を草木染めするもので、家具としての構造は工業デザイン的な「量産」であるが、染まり方は一様ではないために、工芸的な一品物のように「個別」になる。またこの取り組みでは、従来のように量産品をただ受け入れて使うのではなく、能動的に手を加える余地も生み出されている[図C-1,2]。78