ブックタイトル桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

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概要

桑沢デザイン研究所 教員研修会 研究レポート No.45 2017

図E.「色彩569色の1138個のブローチ」3.ジュエリーにおける再創造:オットー・クンツリ…オットー・クンツリ展(東京都庭園美術館・2015)ジュエリーの分野で、金やパール(真珠)などの物質そのものの価値に還元されない装身具のあり方を探求するのが、オットー・クンツリの取り組みである。「色彩569色の1138個のブローチ」(1981)は、パントンの色見本帳を分解してブローチに仕上げたもので、基本的に稀少性に由来する価値をもつ貴金属や宝石ではなく、「色」という造形の基本要素で魅力を生み出そうとする[図E]。また「屋根帽子」(1986)をはじめとするホームをテーマにした制作は、そこに居るときの安心感を携えられるように、そのまま家の「かたち」という造形要素で美的な価値を与えようとする[図F]。「チェーン」(1985-86)では、新聞広告を通じて呼びかけた結果、さまざまな人によって「提供」された結婚指輪をつなげて、ひとつのネックレスに仕上げている。展示では提供者へインタビューをまとめたことばも添付されることで、さまざまな理由で手放された貴金属の物質以上の重さや、装着し難さや手にすることへのためらいが体験される[図G]。同じように複数の提供者から輪がつくられるにもかかわらず、自由な素材の「提供」により、むしろ共同制作の歓びが伝わってくるのが「ビッグ・ファミリー」(2015)である[図H]。「ミッキーの断片」(1988)では、アメリカ合衆国を象徴するキャラクターが、あえて金を用いた破図F.「屋根帽子」図G.「チェーン」81