形体における「時間」の分析 郡山 正 |
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〔5〕実験の実際について。(概要) 無Seriesの実験は、単一色の色紙を数色用意し、5秒〜1秒の間で継続的に、被験者の前に一定距離、一定照度のもとで提示して、その反応をテストした。この前段的テストの結果を考慮しながら、単一色と、印象の強いPattern(今度の場合、仏像の顔を用いた)を重ねて、8mmフィルムに、上述の記号により計画した順序にしたがって記録し、映写機とEDITORにかけて、反転、延長、圧縮の状況を定量的に記録した。 次に動的幾何形体を用いて、Seriesの発生と、その時間の歪曲が、どの程度に表現の強度をもつかの各種テストを行った。また、この場合フィルム教本のデュープを行ない、これを二台の映写機にかけて、完全同調、完全反転、定量のズレ、オーバーラップ等のデーターをとった。 しかし、幾何形体や抽象的形体の動は、どうしてもSeriesを作る力が弱いように思う。これを確かめるためには、もうすこし設備をととのえ、被験者の数をまさねば、正確なことは云えない。 次に、現実の経験では、絶対に不可能な人間や自然の動作(これは、一番Seriesになりやすい)例えば、食事の動作、物体が落ちて、こわれる様等色々ある。これを、正常速(16コマ)と低速(8コマ)、高速(40コマ)の三台のカメラで撮影し、撮影したフイルムから、再び、数本のデュープをつくり、これを、あらかじめ計画した台本にしたがって、無数の部分に分解切断して、再結合し、二台の映写機にかけて各種の実験をした。 低速も高速も、もっと精度も高く、機能のよい撮影機が得られないのは残念であるが、それでも、かなりショッキングな表現効果が、得られるであろうデーターをとることが出来た。 アニメーションの方法も実験した。但しこれは非常な時間を要するので、今回は、ごく単純なものに限られた。但し、アニメーションの場合Seriesも、その歪曲も完全に自由であるのでこの研究のデーターと方法は、これに有力なサデイッションを与えるに違いないという確心に到達することが出来た。 Seriesの研究は、音楽と同じく、結局は線型の構図に外ならないが、可視的なものと、音響とは、自らその複雑さの度合が圧倒的にちがうので、無限の新らしい問題が横たわっているのを発見する。 例えばSeriesの延長とか圧縮は、時間の巨視、微視にあたるわけであるが、科学の世界では、研究の有力な方法として、通常的に使用されている。高速度撮影の延長(微視に相当する)を用いて、物質の破壊の瞬間や、微小な生理現象を探り出したり、、低速撮影によって植物の生長や、細菌等の生涯を描き出す。このような単一なSeries操作でさえ、デザインの世界では殆んど何もなされていないに近い状況である。しかも、上述した通り、Seriesの操作は、その要素の無限のPermutationが予想されるのである。 終りに、この拙い研究のため、桑沢研究所の研修費より多額の出資をいただいたことは本当に有難いことであった。デザインの地味で堅実な研究にスポンサーがつくことは、まづ望めないであろうから、これを機会に桑沢の先生方が、今後どしどし、研修費を利用して、よい研究成果を得られるためのキッカケになるとすれば、この私のとった厚顔な行為も、あながち無意味ではないと思うのですが。以上簡単ながら、学会での研究発表の報告にかえさせていただきます。有難うございました。 −1月7日−
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