完了形の構成
矢野目 鋼
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 その典型的な組み立ての様式とは、さきにのべたように低次結合においては「」の字型、「」の字型などの例があり、正連形における最高次結合、すなわち8オーダーの4連結合の場合には、3個の連続でもって一つの環を閉じ、その中に残りの1個をふくませる型があり、その一種のみである。この例のように環状の連結をつくりその中にそのたをはめこむ様式は、立体構造の場合にも多くあらわれて、特に高次の結合を成功させる型の一つである。もっとも典型的なのは、4個でもってできる二重ドーナツの中に、他の4個が入って成立する例であり、6のオーダーにおいてはじめてあらわれる。いくつかのシンメトリー型そのたの型を文章で描写することは不可能なので例図によってそれらをみていただきたい。このようを典型的様式や特殊な構造様式の把握・解釈の仕方は、造形思考の基礎とをる要因であり、数ある形の中から部分となるものを選択するときその可能性を検討し、そしてそれによってなるべく高次の構造を組織しようとするとき、よい見通しをもってするためには不可欠の重要な指標となる。それはまた構成された形をみるとき、その完結さ、純正さを量るためにも重要な規準となるものである。

完了形の構成 IMG 完了形の構成


 たんに変化そのものをよろこぶわけではないが、ある同一の立連形を単位とする同じ結合次数をもつ2個またはそれ以上の組み立てられた形が、互に異った結合の様式をとれば異った形が生れるだろうということは容易に予想できる。教室の課題実習においては、事実そのような方向に注意がむけられ、多くの形を実現した。これはおもしろい仕事だったが、さらに、異ったオーダーの形をもって異った結合次数をもつ、たとえば、6オーダーの6連結と9オーダーの4連結とは、単元立方体の数が双方とも36となり、従って同等の形が導かれるだろうということ、またさらに、同一のオーダーには属するが異った形を単位とする同じ結合次数をもつ2個以上の構成体が、互に異った結合の様式をとりながら結果としては同じ形をもたらすことがあるだろうという考えがひきだされる。これは実現されたのである!そしてこのようを可能性は想像されるほど確率の高いものではなく、逆に非常に稀少な例であるらしいことがわかってきた。それは8のオーダーに属する2個の異った立連形によって実現された。あらわれた形は、単元立方体の数でいうと、8×8=64=4×4×4となる充満した正六面体である。

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 もとのものと同種同類であって、このように簡潔をしかもありふれた形において、上の例のような「コンコード」が成立するということは、措定した形の構造的特質と、適用した第一・第二の結合式、および系統的に工夫された操作手続きとのあいだに整合した関連性があるという仮定を支持するものであり、またその確率の低いところから、なおさら興味ある考察にみちびかれるのだが、さきに、立方体はすでに複雑すぎるのではないかとのべたことも、やはりこの問題にかかわるある一面を示しており、また、この例はたまたま「つめあわせ(充填)」とか「分割」といわれている解釈も許すところがあり、それはまたさきに正連形に関してふれたが立ち入らなかった「つめあわせ」パズルとともに、同じ仮説にかかわる一つの派生的な面(構造化された全体の中の相互的変換操作の一つ)であろう。以上のように、一つのものの次に同じ一つを並べて置くということを、形の根元的構造と仮定したところからのみ、展開されてあらわれるいくつかの注意すべき形の問題をみると、それらの背景に、造形教育界の仲間コトバで「感覚」といわれてきた反射的・断片的なことがらを意味なからしめるような、形のなりたちに関する論理的統合的な拡大なネットワークがひかえているようにおもわれる。

 次にこの構成的課題における色彩の用い方についてのべよう。そのための必要にして充分なる条件は、次のような簡単な形の規準にいいあらわすことができる。色彩は、形の部分をなす立連形のそれぞれを明瞭に示し、互に他のものとの区別を明らかにつけさえすれば、どのようを色を用いてもよい。最終的構造の内部にいくつかのサブ結合のあるときは、(たとえば、一種の「」の字型結合が2度くりかえされて6連結合体をもたらすとき)その結合のし方の段落を示すように色彩を用いればよい。このように要請されることは簡潔なのだが、それを満足して実現するためには組織的な計画が必要である。そして当然、たとえば既成のものではオストワルドのシステムのような組織的概念を、要請にあわせて構想できなくてはならない。色料を用いるとき色彩は、色相、明度、彩度の三要素をもって分類・組織されると便利であり、この場合にもその概念は有効であるが、問題はその三つの類別要項のもとに交差するラティスの構造と、形の構造的を関係のつき方とを対応させ、具体的な場において「コンコード」させるように考えることにある。そのようにしなければ明瞭な形の分節がえられないことがわかってきた。このことはこの正連形・立連形の構成だけでなく、一般に色をもって形をあらわそうとするところでは共通の基本的条件であり、それ以上のことはほとんど問題にならないようである。以上のように色彩の用い方においても、論理統合的な方法論が現象的な形のなりたちの背後にひかえているようにおもわれる。


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