ごあいさつMessage
1919年から始まったドイツの伝統的なデザイン学校“バウハウス”は2019年で創立100周年を迎えた。桑沢デザイン研究所のデザイン教育の基礎になっている理由のひとつに、1954年にバウハウスの学長だったグロピウスが桑澤洋子先生を訪問され、こんな言葉を残した。「私はここに、素晴らしいバウハウス精神を見出したが、これこそは私がかねてから待ち望んでいたものであり、東洋と西洋の間にかけ渡された、往来自由の創造的な橋である。あなた方に大きな成功を!」僕は、その時の写真と(研究所の入口、胸像の傍に飾ってある)この文章が大好きだ。
ミサワホームには沢山のバウハウス作品がある。僕はそれをひとつひとつ紐解いて13年間ポスターを作り続け、今年で80点になる。
2019年1月にはブルーメ博士の協力により、桑沢の学生がドイツのベルリン芸術アカデミーでバウハウスのパフォーマンスの参加を実現した。その時のガラスダンスを中心に「デザインは死なない。バウハウス創立一○○周年。」のポスターが完成した。
今一番注目しているのはパウル・クレーが制作したデザイン教育の羅針盤だ。羅針盤がないと進路が決まらない。日本語とドイツ語の2つの羅針盤。
渋谷の桑沢山(目には見えないが)を2–3年がかりで登りつめる。虎になって厳しい時代を生き抜く桑沢デザイン学生の卒業生作品展をぜひ見に来て欲しいと願っている。視覚言語が多いと思うが、中島敦の山月記や澁澤龍彦の高丘親王航海記。虎が登場する文学は感動的だ。グラフィックデザインあり、プロダクトデザインあり、スペースデザインあり、ファッションデザインあり、デザインの多様性の表現、創造をぜひ。
バウハウス100周年をいろいろな面で勉強し協力、制作してくれてありがとう。バウハウスには世界的に有名で後世に残る作品を制作した先生が沢山、教授として参加していた。パウル・クレーやカンディンスキーは画家として未来に残る作品をたくさん制作した。その理論も多数残した。その中でも僕はパウル・クレーが残してくれた、バウハウス教育の羅針盤が一番重要な作品だと思っている。羅針盤と火薬と印刷術は中国が発明して、世界中に伝播した。羅針盤がないと船は航行できない。
僕たちの日常の中でも、羅針盤は沢山ある。ボーッと生きてはいられない。クレーの羅針盤を毎日眺めていてもいい。例えばガラス。ガラス建築は100年前から続いている、割れそうで割れないガラス。デザイン学校ではめずらしい、毎日続けられている日記。唐代の名書家、褚遂良の臨書。思いついた言葉を筆書きしてみるのもいい。卒展まで時間が迫って来たが西洋のデザイン、東洋のデザインを頭に入れて完成してほしい。