2024.09.11桑沢デザイン研究所70周年記念プロジェクト 「桑沢 教育 研究 発信」
桑沢デザイン研究所創立七十周年記念の一環として、専任教員による作品と教育参考資料による特別展示をおこないます。
9月7日(土)に開催する学校説明会でもご覧いただけます。また、本ページ内でも展示作品をご紹介しております。
創立七十周年記念の一環として、専任教員による特別展示をおこないます。教育活動との関わりが見て直接にわかるものから、より間接的に展開されながら、それでも確かに関わりがあるものまで、各教員の問題関心や好奇心の在処を示す研究の成果が並んでいます。担当する授業において学生が取り組んだ成果物も一部含まれていますが、これもいっしょに課題に取り組んでくれた学生との共同研究の成果と言ってもいいでしょう。各教員が手がけている仕事の全体像は学生から見ても、社会から見ても、また他の教員や職員から見てもとらえにくいものです。理解を相互に拡げていくために、今後も続く展示の第一回にできればと思っています。
開催概要
会期 : 2024年8月3日 – 9月7日
一般開放日 8月3日(土)10:00 - 16:00、9月7日(土)12:00 - 18:00
休廊日:一斉休業期間(8月14日から8月20日)および日曜日
会場 : 桑沢学園 新教育施設 1F イベントスペース、B1 イベントスペース
住所 : 東京都渋谷区神南1-4-22
※桑沢関係者が同伴すれば一般開放日以外でも観覧可能です。
作品紹介
ビジュアルデザイン分野 鈴木 一成
「風を眺める / View the Wind」
山の頂き、または中腹まで登り、対面する山を約7秒間のスローシャッターで撮影した。我々が遠景で山を見たとき「枝先に揺れる葉々が木を構成し、木々が集まり森になって、それは実は山である」そのように我々は認知している。しかしスローシャッターで撮影されたその枝先の葉々は風に揺らめき、葉の形を認識させることなく色彩の情報として写真に写し出されている。この時あなたの目に映るものは果たして山なのだろうか。
ビジュアルデザイン分野 鈴木 一成
「空色と水色 / Sky Blue, Aqua Blue」
水を透過した鏡に反射する空。このシリーズではその空と水を同時に撮影した。例えば日本の伝統色で青系に分類されるものは60色近くある。分類上、空色と水色は明確に違う色だけれど、私たちが日常を過ごすうえで、その差を意識することは少ない。どちらも青色だ。しかも実際は水も空を色を持っているわけではなく、何かが反射して、透過して青色に見えているのである。
ビジュアルデザイン分野 豊島 晶
「すずむしクッション」
展示物パネル内写真:鈴木 一成
書体会社モリサワからリリースされている私のフォント「すずむし」のクッションです。このフォントには、つきたての丸餅のような「うろこ」、オタマジャクシのような「点」、ぽってりとしたソフトクリームのような「はらい」など特徴的なエレメントがたくさんあります。そのエレメントを部品ごとに抽出し、クッションという立体にすることでコロンとしたユーモラスな造形の面白さを研究した作品です。制作を通して特徴的なエレメントは、立体物になって「すずむし」と認識できることも発見できました。これらのクッションは「モリサワ タイプデザインコンペティション 2024」の作品募集のプロモーション映像でも使用されており、ウェブ上で見ることができます。
ビジュアルデザイン分野 豊島 晶
「野ばら」
ポスターデザイン:王序
マンガの「驚いた時の吹き出し」のエレメントを組合わせてベースを作り、それらを合体して塊にします。その時点では文字として読めない形を、粘土でカタチを形成するようにバランスをみながら可読性のある文字に作りあげています。文字のボリュームを揃えるため、文字の尖った各部分や食い込んでる部分の角度、線が交差してできる穴の位置、内側に弧を描く深さなどを1文字ずつ調整しています。この書体の「文字として読めないようで読める」という可読性の限界に挑戦したフォルムは、近距離と遠距離で異なる印象を与えます。「野ばら」は文字と可読性について思考するきっかけを与え、書体デザインの別の可能性を示す作品です。中国語版が方正字库よりリリース予定です。
ビジュアルデザイン分野 辻原 賢一
「contrast」
有機 ー 無機、デジタル ー アナログ、大 ー 小、自然 ー 都市など、ビジュアルを創造する上で、関係性をイメージしながら1つのイメージに近づく方法を研究している。1つのイメージとは、個人的なものではなく、抽象的でありながらも共有できるものに普遍を感じる。普段、個に感じているものでも、大きな共同体をイメージしてものづくりすることが大切なのだと思う。
ビジュアルデザイン分野 川畑 明日佳
「Lifeforms展 サインデザイン」
展示物パネル内写真:Jack Hems
2022年10月12日から12月30日までロンドンのギャラリー180 STUDIOS (180 The Strand, LondonWC2R 1EA) で開催された『Universal Everything ー Lifeforms』展における会場の全サインデザインを担当した。会場空間デザインはAb Rogers Designが行い、オンラインを活用してデザインを進めた。Universal Everythingの作品は動画やインタラクティブ作品が主なので、会場は暗く、更に複雑な構造の会場だった。そのため遠くからでも順路がわかりやすいように「大きく目立つ数字」をベースにデザインを進め、蛍光オレンジの巨大な数字の上に解説文を黒で印刷した。
ビジュアルデザイン分野 永沼 真一郎
「見える紙パック」
飲料の紙パックは、中身を感じられると楽しく安心に繋がるのかもしれません。「あとこのくらい」がわかることも次に繋がるコミュニケーションとなるはず。包み込みながら見せる紙パックの可能性を提案。
ビジュアルデザイン分野 永沼 真一郎
「さじ加減のパッケージ」
お塩は、細かく、綺麗な粒。
時に、その量を気にかける。
もし、そのまま計量できたら
ちょっと便利かな。
さて、どのくらいふりかけようか。
味を左右する“さじ加減”を見る
パッケージデザインの提案。
プロダクトデザイン分野 本田 圭吾
「SPEDAGI Take the ランバイク プロジェクト」
Spedagi(スペダギ)はバンブーバイクの活用をベースに、都市と郊外の交流を活性化させて促進し、新たな価値を創出する持続可能な地域づくりにつなげることを狙いとした活動。Spedagi_TOKYOとしての私の取り組み(2016年~)は、将来のあるべき持続可能な社会を見据えたサステナブルデザインの実践であり、デザイン教育への還元の可能性を探るスペキュラティブデザインでもある。2020年には「八王子市東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた関連事業」として「東京造形大学x八王子市バンブーランバイクアートプロジェクト(『Tokyo Tokyo FESTIVAL』『東京2020公認文化オリンピアード』認証プログラム)」を受託し、地場技術を活用した40台のアートバンブーランバイクを製作し展示した。
プロダクトデザイン分野 栗原 典善 / 喜屋武 タケル
「クーペのスタディモデル」
喜屋武が代表を務めるNORI,Inc.で所蔵するクーペのスタディモデル。デザイン監修は創立者の栗原典善(桑沢ID 1975年卒)。「普遍的なプロポーションとは何か」をテーマに、サイドビューを基にどの角度から見ても魅力的なアウトラインを探求。本展示に合わせて描き起こしたデザインスケッチは、栗原のプロポーション研究の意志が伝わるよう配慮した。
造形分野 小関 潤
「立方体素材集」
素材の特性を「手に取って」体験するため、また特性を感じ取る「感性」を育てるために制作された教材。重さや温冷感、硬軟、粗滑、乾湿など異なる性質を持つさまざまな素材を、同じ形の立方体で制作している。これにより、個々の素材の性質が際立ち、比較を容易にしている。さまざまな素材を手に取り、その性質の差異を理解すること、同時にその差異を感じ取る自身の「感性」を認識し、高めることを目的としている。バウハウスの予備課程では、感覚訓練を目的とした「触覚版」の制作がおこなわれていた。「立方体素材集」は、その立体版ととらえることもできる。
造形分野 学生作品 / 小関 潤
「ハンドスカルプチャー」
バウハウスで教授をしていたモホイ=ナジが米国に渡り、シカゴで設立したニュー・バウハウスを発祥とする課題。ニュー・バウハウスから発展したインスティテュート・オブ・デザインで学んだ写真家の石元泰博が、桑沢デザイン研究所の設立初期から講師を務め、基礎教育のカリキュラムにこの課題を組み入れた。木のかたまりをノコギリやノミ、ナイフ、ヤスリを使って「手に調和する形」に削っていきます。視覚的な美しさではなく、手の触覚だけを判断基準にして「削っては触る」ことを繰り返します。作り手の感性と素材の特性や手加工の偶発性が形に変化を与え、個性豊かな作品が生み出されます。
造形分野 学生作品 / 小関 潤
「立方体の二等分割」
バウハウスの理念を継承して、1953年にドイツのウルム市に設立されたウルム造形大学でおこなわれていた課題:等量分割をもとにした、桑沢デザイン研究所の設立初期から引き継がれている課題。立方体を同じ形で2つに分割することを条件にさまざまな形を考案します。この制約の中で多くのアイデアを出すために、スケッチやモデル制作を繰り返します。これにより、分割の法則の理解が進み、空間を三次元で理解する力が養われていくことで、形を自由に操り・アレンジすることができるようになってきます。美しい形や意外性のある形など、個々の表現を見つけ出し、作品として仕上げていきます。
造形分野 佐藤竜平
「培相」
パウル・クレーによるバウハウスの授業は、線を運動として捉えることから始まる。物の外形をなぞるだけだった線を、自律的に形を生成する線へと変えるためだ。線は、運動から生まれるだけでなく、運動を介して他の線と関係づけられる。近くの線とは結びつき、遠く線とは響き合う。こうして線は群れをなす。線の関係をたどると、ひとつの群れから様々な相(形)を読み取れる。それぞれの相(形)が次の線を呼び寄せるから、群れは複雑さを増しながら成長してゆく。「人間が思い描くイメージは、動的に成長する線の群れの中から〈相〉として芽吹いたのではないか。」相を培うという名の連作は、こうした考えから始まった。
造形分野 玉置 淳
「ハツカネズミのスケール」
ハツカネズミは小さな生き物です。人間がこの巨大なキャベツを見上げてるくらいのスケールで、小さなハツカネズミはキャベツを見上げていることになります。身近なものでも視点を変えるだけで見え方が大きく変わります。そんな視点を日常の中で発見できると生活はずっと楽しくなるでしょう。ちなみにこの画像は10億画素あります。人間の肉眼よりずっと小さいものまで見えるので、よく観察してみると、新たな発見があるかもしれません。
造形分野 玉置 淳
「ミノムシのスケール」
ミノムシは体長が35mm程度です。人間がこの巨大なサクラの葉を見上げているくらいのスケールで、ミノムシはサクラの葉を見上げていることになります。この画像は、高さ3,000mm、幅は1,700mmで解像度は350dpiあります。そのため、虫に食われている部分もはっきりと見えます。虫の一口の大きさもわかります。この虫食いのサクラの葉は道に落ちていた何の変哲もない落ち葉です。日常の生活の中にも新たに発見できるものは、まだまだたくさんあると思うのです。
デザイン学分野 北田 聖子
「収納され続ける収納 生活者のデザイン史」
2024年8月上旬に『収納され続ける収納 生活者のデザイン史』(雷鳥社)を出版しました。
私は、総合デザイン科と夜間附帯教育でデザイン史の授業を担当しています。その授業でまず受講生にお話しするのは、産業革命を経て近代化が進むにともない、物のつくり方や社会が変化するなかで、「デザイン」が専門職化していく過程です。そこでいつも気をつけているのは、著名なデザイナーやマスターピースからなる単線的な話として、デザイン史を説明しようとしないことです。近代以降専門職化したデザインの所産、たとえば衣服や日用品、家具といったものを享受してきたのは、デザイナー自身だけではなく、無数の、名もなき人たちです。生活者といってもよいかもしれません。私たちは、デザインの所産を住まいのどこかに置いたり、隠したり、飾ったり、収納に工夫を施したりしてきました。そういった生活者の行為を含め、あらたな住まいのあり方を考え、生活を具体的なかたちにしていくという動態を視野に入れることが、デザイン史において、さらには「デザイン」とはなにかを考える上で、重要なのではないかと私は思っています。
そこで本書は、物の置き場所やしまい方を決め、住まいでの行動に指針をもたらし、「生活」によりよいかたちを与えようとしてきた人たちの営みに光をあてるために、「住まいにおける収納がどのように語られてきたか」をたどりました。いわば、生活者のデザイン史を紡いでみる試みです。
(本書の内容の一部は、専門学校桑沢デザイン研究所・教員研修会による助成を受けた研究成果に基づいています。)
スペースデザイン分野 教育参考資料
「RED AND BLUE」
へーリット・トーマス・リートフェルト
*非正規品 桑沢卒業生の家具デザイナー 大橋晃朗さんの自主製作作品
スペースデザイン分野 教育参考資料
「NAKKA チェアー(木座)」
藤森 泰司
スペースデザイン分野 教育参考資料
「RUCA」
藤森 泰司
スペースデザイン分野 教育参考資料
「MR Chair with Arms」
ミース・ファン・デル・ローエ
スペースデザイン分野 教育参考資料
「FROWER VASE」
倉俣 史郎
スペースデザイン分野 教育参考資料
「オバq」
倉俣 史郎
スペースデザイン分野 教育参考資料
「Zipper 40」
北岡 節男
スペースデザイン分野 教育参考資料
「Brno Arm Chair Flat Bar」
ミース・ファン・デル・ローエ
スペースデザイン分野 教育参考資料
「butterfly stool」
天童木工・柳 宗理
スペースデザイン分野 教育参考資料
「Solid Stool」
渡辺 力
スペースデザイン分野 教育参考資料
「ウルム スツール」
マックス・ビル
スペースデザイン分野 教育参考資料
「Okazaki Chair」
Shigeru Uchida
スペースデザイン分野 教育参考資料
「スツール60 / カラリンver」
アルヴァ・アアルト・長坂 常
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「花柄プリントチュールドレス」 ストール付
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「黒ビロードのロングドレス」 黒漆ラメレースに藤原アロー作彫金葉っぱ飾り付袖
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「ワインカクテルドレス」 シルクサテンクレープ
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「シルクジャージドレス」 シルクサテンクレープ
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「シルクジャージドレープドレス」 肩にビーズ刺繍付
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「赤ドレープドレスとケープ」 合繊シルクジャージ
ファッションデザイン分野 収蔵コレクション展示
植田 いつ子
「白~ブルーぼかし染め オーガンジードレス」 手描ぼかし染
ファッションデザイン分野 研究助成金研究 教育参考資料
吉野 雅彦
「Lady like forget-me-not」
刺繍入りイブニングドレス
ファッションデザイン分野 研究助成金研究 教育参考資料
吉野 雅彦
「Diamond Frost」
ドレープイブニングドレス
スパンコール・アンダードレスはサテン生地
ファッションデザイン分野 研究助成金研究 教育参考資料
吉野 雅彦
「Ruby red Queen」
レースイブニングドレス
リバーレース・チュール・アンダードレスはサテンクレープ使用
展示風景撮影: Yusuke Omata