基礎造形
専攻
さまざまな造形課題に取り組むことで、
デザインの原点ともいえる3つの能力
〈観察力・発想力・構成力〉を育みます。
デザインは、特殊な才能や感性をそなえた専門家だけのものではありません。誰もが、仕事や生活を通して、表現力や創造力を発揮する機会をもっているのです。
では、表現力や創造力を育むにはどうしたらよいでしょうか。先入観にとらわれずにものごとの成り立ちを見極め、そこに独自の発想や表現を加えていくには、どんな〈準備〉が必要でしょう。桑沢デザイン研究所は、長年にわたるデザイナー育成を通して、この問いに向き合ってきました。
そこで確信したのが、優れたデザイナーは3つの能力を身につけているということです。
まず「観察力」。多様な「ものの見方」を駆使することで、ふだん見慣れた、ありふれたものから、新鮮な発見を引き出します。こうした気づきがデザインの起点となるのです。
つぎに「発想力」。あらかじめ目的や意味を定めてしまわずに、実際に素材に触れて手応えを感じ取り、そこからどのような可能性を引き出せるか模索します。試行錯誤の中でこそ、優れたアイディアは生まれるのです。
そして「構成力」。好き嫌いや流行に頼らず、体系や規則を踏まえて色や形をあつかう能力です。制約を受け入れることで、かえって創造性が刺激されることがあるのです。
「基礎造形専攻」は、さまざまな造形演習を通して、デザインの原点ともいえるこの3つの能力を育んでいきます。
curriculum
カリキュラム月・木 18:30-21:10[1年制/定員40名]
前期[15週]
後期[15週]
粘土を使った立体デッサンと紙の上の平面デッサン、2つのやり方でモチーフを再現します。デッサンに苦手意識をもっている方でも、初歩から段階的に学ぶことができます。ただ漫然とモチーフを眺めるだけでなく、構造、量感、質感など、さまざまな〈ものの見方〉を理解し、確かな「観察力」を養います。
▲人体など形の成り立ちが複雑なモチーフにも挑戦します。細かな部分にとらわれず、カラダ全体の量感や運動感を観察して描きます。
▲まずは単純な立体図形をモチーフとして、線の引き方や形の見方を学びます。こうした基礎を身につけた後、段階的にモチーフの難易度を上げていきます。
▲彫塑では、対象をさまざまな角度から観察し、その量感を粘土によって直接かたちづくります。再現の方法が変われば、ものの見方も変わります。ふだん軽視されがちな〈触覚の力〉を再認識します。
よい発想すなわち〈ひらめき〉がどこから生まれ、どのように広がっていくかは、予想できません。まずは先入観を捨て、ときには偶然に身を委ねながら、さまざまな〈試行錯誤〉を繰り返すことが必要です。こうして生まれたたくさんの選択肢のなかから〈ひらめき〉は発見されます。
▲「色材表現」はさまざまな色材の個性、特徴、面白さを物理的・化学的に引っ張り出して思いがけない表現をみつけ、各自のデザイン表現の幅を広げます。
▲木材をのこぎりやナイフを使って〈手に調和する形〉に削ります。視覚的な美しさではなく、触覚を判断基準とすることで予想外の造形が生み出されます。
▲暗闇で光を動かし、その軌跡を写しとる「ルミノグラム」を体験します。見通しのきかない暗闇であるからこそ、「考える前に動いてみよう」そして「思い通りでなかった結果も肯定的に活用しよう」という即興精神が発揮されます。
本来、色や形は実に多様な情緒やメッセージを伝えることができるのですが、個人の好みや時代の流行にとらわれてしまうと、表現の幅がせまくなることがあります。そんなとき、色や形を〈体系的〉に理解して〈計画的〉に操作する「構成力」があれば、好みや流行を超えた、より柔軟で幅広い造形表現が可能になります。
▲色には〈明るさ〉〈鮮やかさ〉〈その色らしさ〉の3つの要素があり、これらを組み合わせることでそれぞれの色彩のもつ個性やイメージを引き出し、豊かな表現ができます。この学習を通して、色彩がさまざまなデザインに大きな役割を果たしていることに気づきます。
▲〈点〉〈線〉〈面〉などの形の要素の組み合わせや、変形、階層、立体化などの操作を用いて表現の可能性を探っていきます。
▲線材の特徴は〈長さ〉と〈方向性〉です。それを計画的に連続・集積させることで生み出されるリズム感や動きなどの表現効果を学びます。