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インテリアデザイナー 佐々木達也さん

2010年 スペースデザインコース 卒業

1985年生まれ。関東学院大学人間環境デザイン学科を卒業後、〈桑沢〉へ進学。卒業後は、モダンデザインを手がけるランドスケーププロダクツにて、家具の設計・製造、卸業、アートギャラリー運営などに携わる。2022年に独立し、BEARERを設立。オリジナル家具の販売や企画展示、内装設計を通じて、人々が心地よくつながる空間づくりを目指す。桑沢デザイン研究所非常勤講師として「エレメントデザイン概論」を担当。

デザイナーとしての覚悟

―― 〈桑沢〉での2年間について教えてください。

昼間は建築設計事務所でアルバイトをしながら、夜間部に通い、ひたすら課題と格闘していました。授業でプロのデザイナーとして活躍する教員からの厳しい指摘を受けるなかで、“デザイナーとして生きること”、“デザインの現場とは何か”を肌で感じた2年間でした。まさに、デザイナーとしての覚悟を培った時間だったと思います。

―― 卒業後は、ランドスケーププロダクツに入社されています。実際に働く中で学んだことはありますか?

ランドスケーププロダクツでは、家具の設計・製造だけでなく卸業も行なっていたため、全国の小売店や職人の方々と直接やり取りする機会が多くありました。そこで初めて、自分が考えたものがどのようにつくられ、流通し、最終的に使い手のもとへ届くのかを実際に目の当たりにしました。建築設計事務所では、大きな理念を描き、それに基づいてディテールを詰めていくプロセスを学び、〈桑沢〉ではデザインの手法や歴史を学んでいました。しかし、デザイン・プロセスが人と人とのつながりによって成り立っているものなのだと実感したのは実際に働きはじめてからです。
また、デザインは決してひとりで完結するものではないからこそ、プロセスを進めるためには、周囲の人々を巻き込むことが不可欠です。その過程では、個人で制作する場合には直面しない多くの課題が生じます。たとえば、ある商品をつくりたいと考えても、会社として進める以上、当然周囲から「予算内でどのように製作するのか」「市場で本当に受け入れられるのか」といった意見が出てきます。そうした課題を乗り越えるためには、自ら技術を持つ職人を探し、買い手を見つけ、関係者を説得していくことが求められます。たとえば、2024年に制作した『Meiji Park Market』の照明もその一例です。接合技術の難しさから制作が難航しましたが、職人の方と協力することで、限られた予算の中でベストな提案ができたと思っています。

―― 周囲を巻き込む際に、意識していることはありますか?

ものづくりのプロセスは、絶え間ない決断の繰り返しです。時には意見が対立することもありますが、相手を説得するためには、最終的な責任を自分が全て引き受ける覚悟が必要です。その覚悟がなければ、ものを完成させることはできません。

仕事と生活の一体化

▲BEARER(ベアラー)は、“担ぎ手”や“実のなる樹木”を意味します。この名前が示すように、佐々木さんは家具が空間の担い手となるように壁画や照明、空間全体のコーディネートを手がけ、空間にストーリーを持たせるデザインを目指しています。

―― 2022年に独立されたとのことですが、会社に所属して働くことと独立して働くことにはどのような違いがありましたか?

独立すると、先ほどお話しした人との繋がりの大切さをよりいっそう明確に感じるようになります。特に独立直後は仕事の数が多くあるわけではないため、それまで築いてきた人間関係が仕事に直結します。また、会社に所属している場合は、ビジネス的思考が根幹にあるため、売上を上げるためにルーティンを強化し、それを効率的に回しつづけることが求められます。一方で独立後は、休むことも働くことも自由となり、休んでるときも働いているような、働いているときも休んでいるような、仕事と生活が分離せず、一体化している感覚になりました。大変な面もありますが、その分、すべての時間を自分のやりたいことに使えるようになります。まさに自由と責任は表裏一体だと感じています。

―― 独立後にできた習慣があれば教えてください。

仕事以外の学びの時間が増えました。自分には関係ないと思っていた分野についても積極的に学ぶようになりました。デザイナーという職業は社会に合わせて変化していく職業だからこそ、学びつづけることが大切だと改めて感じています。

―― 〈桑沢〉には将来的に独立を目指している学生も多いと思います。独立するために必要なことは何でしょうか?

まず覚悟があることが大前提です。当然ですが、実力がなければ生計を立てることはできません。そのうえで、人とのつながりを大切にする姿勢が欠かせません。実際に独立して成功している人で、その姿勢を持っていない人には出会ったことがありません。

他者へ自分をひらく

―― 〈桑沢〉を目指される方へ、今だからこそ伝えたいことはありますか?

〈桑沢〉にはさまざまなデザイン分野の人が集まっており、卒業後も同級生とのつながりは仕事やプライベートで続いていきます。私自身も、学生時代に築かれた関係は卒業後も貴重な財産となっています。だからこそ学生時代に、自分のことを他者に共有することが大切です。自分をさらけ出すことは勇気がいることですが、〈桑沢〉には自分を共有することで、共鳴し、応えてくれる人が多くいるはずです。自分の考えや想いを表現し、共有することで世界は広がり、それが新たなサイクルにつながっていくでしょう。


<2025年>
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