日本で最初の『デザイン』学校で未来を創造する【専門学校桑沢デザイン研究所】

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【月刊インタビュー】 桑沢卒の素敵なあのひと
今注目のクリエイターにお話を伺う連載。第9回目は、グラフィックデザイナーとして活躍しているあのひとです!


グラフィックデザイナー 加瀬透さん

1987年 埼玉県出身。立教大学経営学部国際経営学科を経て、2012年 桑沢デザイン研究所 夜間部 専攻デザイン科 ビジュアルデザイン専攻卒業。グラフィックデザインやエディトリアルデザイン等のデザインワーク、またグラフィックワークの制作・提供・展示を中心に活動。近年の展覧会に「2つの窓辺」(CAGE GALLERY|2021)。受賞歴にJAGDA新人賞2021。

―― まずは、最新の制作物について教えてください。                           

六本木にあるデザインハブという展示スペースで行われる親子向けのワークショップ「東京ミッドタウン・デザインハブ・キッズ・ワークショップ2021」の告知ポスターです。

東京ミッドタウン・デザインハブ・キッズ・ワークショップ2021 東京ミッドタウン・デザインハブ・キッズ・ワークショップ2021 Kids Workshopの頭文字である「K」と「W」をポスタービジュアルの核とし、その周りを子どもたちがワークショップ内で接するであろう様々なかたちたちが取り囲んでいます。「K」と「W」のグラフィック表現は、ボールや言葉が飛び交い遊びまわるような子どもの快活なイメージを表し、私なりに楽しげな印象になるようにデザインを考えました。また夏に行われるイベントなので、緑が生き生きと芽吹いているような季節を感じていただけるような配色を考えました。

次に、港区白金のOUR FAVOURITE SHOP内で行われた「音楽とグラフィック」というグループ展に出展したポスターです。
こちらは、「本展では日頃、音楽に親しむグラフィックデザイナー6名がSpotify (音楽ストリーミングサービス)で自分のプレイリストを作成し、アイコンとなるグラフィックを制作。それを元にして音楽とデザインのイマジネーションを独自の見解でヴィジュアルやツールに落とし込み自由に表現する。」
(引用:http://ofs.tokyo/music_and_graphic)というようなコンセプトで行われた企画展内で発表したものです。

音楽とグラフィック 参加者6人ともプレイリストのテーマのようなものを各々定め、そのプレイリストのアイコン(ジャケット)を制作し、そのイメージを展示空間に拡張するということが、実際の展覧会で行われたことでした。

私がテーマのようなものとして扱ったのが、「正月に家族で車で出かけた時の記憶」です。その車には生まれたばかりの甥も乗車していました。感覚器官が整う前の赤ちゃんの分節のない曖昧な世界や、車の外を流れ混ざり合う景色、その日のことを思い出す自分の断片的な曖昧な記憶を、複層的に、ポスター(写真)やLPジャケットに落とし込みました。プレイリストは、出かけたその日の1日をイメージしたものとなっています。(プレイリスト:「Memories of January 2, 2021」

そのような個人的な経験を制作の対象にしつつも、もう1つ持ち続けていた問題意識があり、それについてもこの制作を通じて同時に考えました。むしろ先に述べたことは実際に述べたいことへの手続きや導入であるとも考えています。長くなりややこしい話になるので手短にお話しすると、写真と認識される境界はどこか、ひいては認識の境界や、間(あいだ)、中途半端、はたまた微妙さ、ということについて考えた制作でもありました。それはグラフィックデザインを含む私の制作領域全般に関わることでもあります。

―― それでは、桑沢に入るきっかけを教えてください。

父はアートやデザインに造詣が深かったのですが、私自身は当時特別興味が湧かなかったんです。高校の終盤から大学に通っていく過程で、音楽やファッションを好きになったことをきっかけに関心が高まり、デザインに直接触れてみたいと思い始めました。ただデザインのことに詳しい友人は周りにいなかったので、どういう世界が広がっているのか全く分かりませんでした。

デザインについて相談できる相手が父しかいなかったので相談したところ、桑沢デザイン研究所という学校があるという話が出たんです。時期は少しずれて、通っていた大学の先生にも相談したところ、10年ほど前に桑沢に進学した人をご紹介いただき、実際にその方とお会いすることができました。その方は桑沢の夜間部を卒業して、グラフィックデザイナーにとして仕事をされていました。そこで「桑沢」という情報が重なって、とにかく「桑沢」に行ってみようと決めました。

―― 入学してからはいかがでしたか?

まず、グラフィックデザインや美術、音楽、映画などの話がクラス中で行われていて、とても新鮮で刺激的でした。入学して本当に良かったと感じました。夜間部は社会人経験のある方も多く年齢も様々なので、自分の経験にはない面白い話を色々と聞くことができました。

エディトリアルの授業を担当されていたA先生とは、今でも親交があります。学内・学外問わず、良い経験をさせていただいています。授業では、クラスメイトの講評を聞く機会がたくさんあり、自分にない考え方に触れられて面白かったですね。

また、在学中はクラスメイトとグループ展を開催してみたり、ZINEを作ってみたり、イベントに参加したりしました。イベントに行くと他の学校・大学の学生とも知り合う機会を持ちやすかったですね。情報交換の場にもなっていました。

―― 在学中に制作し、印象に残っている作品はありますか?

ぱっと思いつくものは、2つあります。クラスメイトが主宰するパフォーマンス公演用に制作したフライヤーと、別のクラスメイトと共同で企画したグループ展のポスターです。

前者は卒業する頃にデザインしたのですが、周りから「グラフィックデザインをやっている人なんだね」と少しだけ認知されるきっかけになりました。今でもとても思い出深い制作物です。

グループ展の方は卒業して1年くらい経った頃に行ったものになってしまうのですが、桑沢の先生が運営しているギャラリーを借していただいて、他の美大や専門学校などの友人もお招きして展覧会を行いました。そこで知り合ったアーティストやイラストレーター、グラフィックデザイナーの方とは今でも繋がりがあります。

―― 就活はどうでしたか?

「現場を経験するのが大事だよ」と友人から聞いたこともあり、1年次に桑沢の求人を使って半年ほどアルバイトをしました。アルバイト先はエディトリアルのデザイン事務所で、現場の仕事のフロー、速さ、精度などを実際に体験できたと思います。そうしている内に就活の時期になってしまい、まだ何もできない状態に等しいくらいだったので、たくさんの企業を受けて、たくさん落ちました(笑)。内定をもらえないまま卒業し、その後見つけたアルバイト先で就職が決まりました。

夜間部に入るとかなり早い段階で就活が始まるのですが、すぐに決まらなくても、落ち込まなくていいと思います(笑)。

―― 独立してからはいかがでしたか?

独立して1、2年目は大変でしたね。その経験は今でも大切な経験です。今は忙しくも楽しく仕事をしています。2017年には、桑沢の卒業生作品展のポスターも制作させていただきました。

卒業生作品展2017 ―― 今年はJAGDA新人賞も受賞されました。出展作品について教えてください。

まず、JAGDAという公益社団法人日本グラフィックデザイン協会という協会があり、毎年審査会が行われます。団体に所属している39才以下のデザイナーの中から、審査会を通じておおよそ3名にJAGDA新人賞が授与されます。私は2021年の新人賞を頂きました。

入選したものの中からいくつかお話しできればと思います。 1つは「Tofu-Knife」という写真集です。写真家 / フォトグラファーの川谷光平さんとほぼ2人きりで制作しました。また、この本はKassel Dummy Awardという国外のダミーブックのコンペティションでグランプリを受賞しました。グランプリの特典として今年流通版が海外で制作され、世界各地での発売を予定されているそうです。

Tofu-Knife 普段の仕事の進め方としては、様々な人を介して仕事を進めることが多くなるのですが、こちらの仕事では最小のチームで制作を行いました。川谷さんとほぼ2人きりで話しながら制作を進めて行ったこともあり、とても密度の高い話が出来て、学生時代のように楽しい仕事だったなと思います。印刷や製本の段階では、藤原印刷さんと篠原紙工さんにご相談し、適切な印刷方法と製本方法を導いていただきました。

2つ目は「都市計画(Urban Planning)」というレコードのデザインについてです。こちらについては、アンビエントやニューエイジなフィールを持つ音楽群だったので、これまでのアンビエントやニューエイジのジャケット文脈を自分なりに解釈・誤読しつつ、今リリースされるアンビエントやニューエイジのアルバムならば、どういったかたちのジャケットが考えられるのかということを中心に考えていきました。またタイトルの「都市」や「計画」という言葉から想起されるイメージを複層的に重ね合わせ、イメージを制作していくことを実践しました。

都市計画 ―― 新人賞受賞に際して、感じたことはありましたか?

10年ほどグラフィックデザイナーとして社会と関わってきましたが、結局のところ何者になったんだろうかとふと思ったんです。若い頃は色々思い悩んだりしましたが、結局「自分にできることをやるしかないのかな」ということに立ち返ってくるというか、そういったことを感じました。むしろそれでいいのではないかと思えるようになりました。

―― 最後に、在学生や学生の方に伝えたいことがあればお願いします。

様々な経験をされてこられている先生方の授業は卒業してからも役に立つと思います。また、桑沢の図書室には豊富に資料があるので、資料をたくさん見るのが良いと思います。

展示に行ってみたり、イベントに参加してみたり、と未知のことににたくさん挑戦してみるのも良いのではないのでしょうか。学生時代にしかできないことはたくさんあると思うので、学生時代だからこそ出来ることをやってみるのが良いと思います。

▼転機となった制作物_お米は生きている ♯03『テレビ TELE-BI』フライヤー

お米は生きている

▼転機となった制作物_『とぶたましい ~TRIPPY SOULS~』ポスター

とぶたましい

インタビュアー:はやしわかな
桑沢デザイン研究所 総合デザイン科 プロダクトデザイン専攻卒業。
<2021年08月>
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