在校生インタビュー

デジタルではなく
フィジカルに重点を置いたカリキュラム
総合デザイン科3年 スペースデザイン専攻齊藤まどか
- 1999年京都府生まれ
- 2022年同志社大学文学部卒業
- 1999年京都府生まれ
- 2022年同志社大学文学部卒業
広告デザインの裏側
ーデザインに興味をもったきっかけを教えてください。
大学で広告デザインについて調べる授業があり、普段何気なく見ていた広告が、単に目を引くだけのものではなく、美意識や価値観といった人々の無意識にまで影響を与えるデザイン技術によってつくられていることを知りました。広告デザインへの興味を深める中で、卒業論文ではデザイナー・太田和彦が手がけた資生堂の広告について研究しました。
資生堂で広告デザインを手がけてきたデザイナー・太田和彦の作品集。図書室に所蔵されている。
ーなぜ卒業後に再びデザインを学ぼうと思ったのですか?
大学3年生の時にはじめた就職活動では大手広告代理店を志望していました。しかし、いざエントリーが始まると、ポートフォリオ制作の段階で壁にぶつかりました。大学では主に座学を中心に学んでいたため、企業に提出できるような作品を十分に制作していなかったのです。これは短期間で補えるものではないと考え、就職活動を一旦中断し、〈桑沢〉への入学に向けた準備を始めました。ーなぜ〈桑沢〉だったのでしょうか?
自分の年齢を考慮し短期間で集中的に学べること。また、課題が多く厳しい環境だという評判も、あえて厳しい環境に身を置きたいと考えていた私にとって大きな魅力でした。さらに、実際にオープンキャンパスに参加した際、デジタルではなくフィジカルに重点を置いたカリキュラムであることを知り、それが最後の決め手となりました。ーなぜフィジカルが重要だと思ったのでしょうか?
入学する前から、趣味でデジタルツールを使った自主制作を行なっており、その中でツールの移り変わりの速さを実感していました。ひとつのツールを習得しても、新しいツールがすぐに登場し、古くなってしまう。だからこそ、数年かけて学ぶのであれば、ツールが変わっても色あせない、デザインの基盤となるような技術を身につけたいと考えていました。空間の豊かさを知る
ーもともと広告デザインに興味があったとのことですが、なぜスペースデザインを専攻したのでしょうか?
入学当初はビジュアルデザインを専攻するつもりでしたが、1年次の共通課程でスペースデザインを学んだ際に、立体的な作品をつくる楽しさを知りました。さらに、スペースデザインは単に形をつくるだけでなく、人が実際に利用する以上、法律など多くの規制を避けられません。それでもなお、人々の生活を豊かに発展させる力を秘めている点にやりがいを感じました。ー印象に残っている授業・課題はありますか?
住環境デザインIIです。この授業では、〈桑沢〉で教鞭をとった戦後を代表する建築家・篠原一男が設計した住宅のひとつがくじで割り当てられ、その住宅の隣に新たな住宅を設計する課題に取り組みます。篠原の著書や論文を読み込み、その思想を自分なりに解釈したうえで設計を進めます。私は『狛江の家』を担当し、篠原の思想を“ 建築の無機性と人間の有機性の間に生まれる余白こそが空間の豊かさを生む”と捉え、それを反映した住宅を設計しました。
5Fのロッカーに並ぶ篠原一男が設計した住宅の模型。ひとつの住宅から空間への考え方を読み解いていく。
ー〈桑沢〉スペースデザイン専攻の特徴は何だと思いますか?
〈桑沢〉では、建築の座学にあたる法規や構造を学ぶのは3年前期からです。それまでの2年間は、徹底的に自分が心地よいと感じる形や空間を追求する時間となっています。知識を先に入れるのではなく、まず身体感覚を研ぎ澄まし、その後で社会実装について考えるという順番は、〈桑沢〉ならではの特徴だと思います。誰かの日常をつくる
ー今後の進路について考えていることを教えてください。
卒業後は個人住宅の設計に携わりたいと考えています。現代はSNSを通じて簡単に他者とつながれるようになった一方で、孤独を感じる瞬間は増えているように思います。そのような状況だからこそ、住む人が他者の存在を感じ、また自分自身の存在も空間の中に蓄積されていくような、安心感のある住宅を設計したいと考えています。ーこれから〈桑沢〉を目指す方に伝えたいことはありますか?
私自身、大学卒業後に〈桑沢〉へ入学したため、最初は周囲に馴染めるか不安でした。しかし、実際に入学してみると、年齢の違いは全く気になりませんでした。年齢を理由に迷っている方もいるかもしれませんが、その点は心配しなくても大丈夫かと思います。
