桑沢が考えるUI/UXとは。新設「XD専攻」が目指す体験の設計
デジタルツールや生成AIの急速な普及にともない、デザインのあり方そのものが大きく変わり始めています。スマートフォンの画面をタップすることから、AIとの対話、あるいはリアルな空間での行動まで、私たちが日々触れる「UI(ユーザーインターフェース)」や「UX(ユーザーエクスペリエンス)」の領域は広がり続けています。
1954年の創立以来、時代を反映したデザイン教育を続けてきた桑沢デザイン研究所は、2027年春、夜間部に「XD(エクスペリエンスデザイン)専攻」を新設します。
私たちが今、改めて「UI/UX」をどう捉え、これからの時代にどのようなデザイナーを育てようとしているのか。桑沢のDNAから紐解く、本質的な「体験のデザイン」についてご紹介します。
UIとUXの違いとは?
UI(ユーザーインターフェース)とは、ユーザーがサービスや製品と接する接点のことです。Webサイトの画面やアプリのボタン、案内サインなどがその例です。 一方、UX(ユーザーエクスペリエンス)は、それらを通してユーザーが得る体験全体を指します。 近年は、単に「使いやすい画面」をつくるだけでなく、人がどのような体験をするのかを設計することが重視されています。1. UI/UXはウェブやアプリだけのものではない
デジタルサービスが日常に浸透した現在、機能だけでなく体験そのものの価値が重視されるようになっています。 「UI/UX」という言葉が出ると、どうしてもウェブサイトやスマートフォンのアプリ画面といった、デジタルな領域をイメージしがちです。しかし、桑沢が考えるXD(エクスペリエンスデザイン)において、それはごく一部の要素に過ぎません。XDの責任者を務める本田圭吾先生と、非常勤講師としてUI・UX講座などを担当する福原智学先生は、次のように述べています。 「XDという概念は、実は決して新しいものではありません。デザインの世界がもともと担ってきた『人々の体験や行動を誘導し、創造する』という役割そのものだからです。 桑沢創立当時の日本は、まだモノが豊かではない時代でした。そのため、『モノをどうデザインするか』が最優先され、ビジュアル、プロダクト、スペース、ファッションといった領域に分かれていきました。しかし、モノやサービスが溢れる現代において、人々が求めているのはその先にある『体験』です。 持続的に使う人に寄り添うプロダクトの体験設計も、エンタメにおける熱狂の提供も、すべては『人・モノ・環境の関わりの中で生まれる体験』という一つのデザイン対象なのです。」
2. 「手で考える」からこそ生まれる、デジタルと実体の横断
最先端のイメージがある「XD」や「UI/UX」ですが、桑沢のXD専攻では、1年次にバウハウスに由来する「共通基礎」を徹底的に学びます。色彩、素材、構造、変化といった造形の要素を、手作業を中心に、身体感覚を通して学んでいきます。 なぜ、デジタルの時代に「手作業」なのでしょうか。 現代は、表現ツールや3Dプリンターの普及によって、誰もが手軽に形を作れるようになりました。しかし、それは「デザインの民主化」ではなく、あくまで「スキルの民主化」です。道具や手段が手に入りやすくなったからこそ、デザイナーに求められるのは「小手先のスキル」ではなく、「新しい価値観をどう提供していけるか」という本質的な思考力です。 画面の中のピクセルひとつ、アプリの操作感ひとつをとっても、普遍的な造形の美しさや空間のバランスを身体で理解しているデザイナーが作るUI/UXには、圧倒的な心地よさと説得力が宿ります。デジタルと実体を横断する体験設計力の土台は、この地道な「基礎」の中にしかないと、私たちは確信しています。
3. 領域を横断し、自分の軸を拡張する
近年、学生たちの卒業制作を見ていても、グラフィックやプロダクトといった従来の枠組みを軽々と超えた作品が次々に生まれています。 2027年にスタートするXD専攻の2年次カリキュラムでは、以下の6つの領域が用意されています。・メディアクリエーション
・メディアクリエーション
・サービスプロダクト
・ライフプロダクト
・カルチャーコミュニケーションデザイン
・ライフスペース
・ファッション
学生は、この中から特定の1つに絞る必要はなく、2つの科目を選択して領域を横断しながら学びます。多様な視点を結びつけることで、実体のないものにも価値を見出してもらえるような、新しい体験を生み出す力を養います。
特に夜間部には、すでに社会人として別の職業(医師、介護職、弁護士、調理師など)の軸を持った多様な人たちが集まっています。「自分の持っている専門性をさらに拡張させたい」「デザインや美しさに対する感度を、自身の領域に活かしたい」という社会人の皆さんの多様なバックグラウンドと、この横断的なカリキュラムは非常に高い親和性を持っています。



